パウエル米FRB議長、ジャクソン・ホール会議で講演、短期的な金融政策や政策枠組み変更について説明

(米国)

ニューヨーク発

2025年08月25日

米国連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は8月22日、カンザスシティー連銀が主催するジャクソン・ホール会議で講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。市場から注目されている短期的な金融政策に対する考え方や、5年ごとに行われ、同日発表された金融政策枠組みの見直しPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の考え方について説明した。

短期的な金融政策に関しては、前提となる労働市場と物価の現状について「労働市場は依然として最大雇用に近い水準を維持し、インフレ率はやや高水準にあるものの、(新型コロナウイルスの)パンデミック後の高水準からは大幅に低下している。同時に、リスクバランスは変化しつつあるように見受けられる」と総括した。

労働市場に関しては、7月の雇用統計(2025年8月4日記事参照)などに言及しながら、現状は労働供給が労働需要に合わせて著しく減少する「奇妙な均衡」にあり、雇用に対する下振れリスクが高まっていると述べた。また、下振れリスクが顕在化する場合には、レイオフの急増や失業率の上昇というかたちで急速に顕在化する可能性があると、警戒感を示した。

物価については、関税引き上げによって一部の財価格が上昇し始めていることを指摘するとともに、「関税が消費者物価に与える影響は今や明確だ」と述べた。ただし、影響が表れてくる時期や規模には大きな不確実性があるとし、継続的にインフレリスクを高めることになるかどうかが問題との認識を示した。この点については、影響は比較的短期間の一時的な変化にとどまるシナリオがベースラインだとしながらも、(1)物価上昇によって労働者が賃上げを要求し、賃金と物価の間で悪循環を起こすシナリオ、(2)期待インフレ率が上昇し、実際のインフレ率もそれに引きずられて上昇するシナリオが生じ得ると言及した。

こうした認識の基に、(1)政策金利は1年前と比べて中立金利に100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)近づいており、失業率をはじめとする雇用指標の安定は政策スタンスの変更を慎重に進めることを可能としている、(2)政策が引き締め的な領域にある中で、ベースライン見通しとリスクバランスの変化により、政策スタンスの調整が必要となる場合もある、(3)金融政策は、あらかじめ定められた道筋に沿って行われるものではなく、データとその見通し、リスクバランスへの影響に関する評価のみに基づいて決定すると述べた。9月に開催する次回の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げに含みを残したかたちだ。

金融政策枠組みの見直しに関しては、(1)2%のインフレ目標を下回っていた時期を補うために、目標を一定期間上回るインフレ率を容認するアプローチの廃止や、(2)最大雇用が達成されている場合の金融政策のあり方についての考え方の明確化、(3)インフレと雇用最大化の各目標の達成時期が異なる場合の金融政策アプローチの明確化などを指摘した。

(加藤翔一)

(米国)

ビジネス短信 21523d3d037215ba