8月の新車販売、電動車が押し上げ、前年同月比3.8%増

(米国)

ニューヨーク発

2025年09月09日

米国自動車市場の統計を提供するモーターインテリジェンスの発表(9月5日)によると、8月の米国新車販売台数は前年同月比3.8%増の148万1,807台となった(添付資料表1参照、注1)。好調な株式市場や安定した車両価格に支えられた旺盛な購買意欲に加え、9月30日でクリーンビークル(CV、注2)購入に対する税額控除が撤廃されることから(2025年7月15日記事参照)、それを前にした駆け込み購入などが販売を押し上げた。

車種別では、小型トラックの販売が前年同月比6.7%増の122万2,642台と伸び、引き続き市場を牽引した。一方、乗用車は8.0%減の25万9,165台となった。メーカー別では、ステランティス、ホンダ、フォルクスワーゲン(VW)、テスラ、マツダ、スバルが前年同月比で減少した一方で、トヨタ、ゼネラルモーターズ(GM)、現代、日産、起亜、フォードが増加した(添付資料表2参照)。増加幅で最大のトヨタは、中型のスポーツ用多目的車(SUV)「グランドハイランダー」や、小型SUV「RAV4」が好調で、前年同月比2万6,984台増加した。次いでGMは小型SUV「エクイノックス」やピックアップトラック「シルバラード」などが伸びて、1万4,124台増となった。同社の販売を動力別でみると、増加分の7割以上をバッテリー式電気自動車(BEV)の伸びが占めた。他方、ステランティスは、人気ブランドのジープやラムブランドが落ち込み、前年同月比6.8%減少した。ホンダは、ハイブリッド車(HEV)「シビック」やBEV「プロローグ」などの電動車はプラスとなったものの、ガソリン車が1万4,792台減少し、全体を押し下げた。

なお、4月3日から1962年通商拡大法232条に基づく自動車への追加関税が発動されており、各社はコスト上昇の影響を公表している(2025年8月8日記事参照)。米自動車評価・調査会社ケリーブルーブックの発表によると、7月時点で1台当たりの平均販売車両価格は4万8,841ドルとなり、6月の4万8,900ドルから低下し、前年同月比でも1.5%増にとどまった。

税額控除の駆け込み需要で、CVシェアは過去最多の12%

クリーンビークル(CV)の販売台数は、前年同月比18.3%増の17万8,530台だった(添付資料表3参照)。全車に占めるシェアは前年同月より1.5ポイント増加し、データが確認できる2018年以降最多の12.0%に達した(添付資料表3参照、注3)。

コックスオートモーティブのシニアエコノミスト、チャーリー・チェスブロー氏は今後の見通しについて、「電気自動車(EV)の販売は、税額控除の期限切れに伴って大幅に減少する可能性があり、他の車種の市場環境も、今後数カ月でさらに低迷する見通しだ。関税対象製品が既存在庫に取って代わるケースが増えており、価格も徐々に上昇すると予想される」と述べた。一方、現代ノースアメリカのランディ・パーカー最高経営責任者(CEO)は「市場が落ち着けば、EV市場は成長を続けると確信している」と述べ、EV市場の中長期的な展望に楽観的な見方を示している(「ウォールストリート・ジャーナル」電子版、9月4日)。

(注1)ゼネラルモーターズ(GM)など一部の販売台数は、月次販売台数を公表していないため、モーターインテリジェンスによる推定値であることに留意。

(注2)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV) 、燃料電池車(FCV)の総称。

(注3)2025年6月までは四半期ごとのデータとの比較。

(大原典子)

(米国)

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