7月の米小売売上高は前月比0.5%増で市場予想並み、関税による価格転嫁を見越した前倒し購入の傾向

(米国)

ニューヨーク発

2025年08月18日

米国商務省の速報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(8月15日付)によると、2025年7月の小売売上高(季節調整値)は前月比0.5%増の7,263億ドル(添付資料表参照)と2カ月連続の増加となり、ブルームバーグの市場予想(0.6%増)並みだった。ただし、小売り統計はインフレ調整されておらず、7月の消費者物価指数(CPI)では関税引き上げの影響で価格転嫁の影響が表れており、実質の伸び率はより小幅にとどまった可能性がある。また、トランプ政権の関税政策による価格転嫁が本格化する前に、値上げを見越した前倒し購入が続いている傾向がうかがえる。なお、6月は同0.6%増(速報値、2025年7月18日記事参照)から0.9%増に上方修正された。

自動車・同部品、無店舗小売りなどが押し上げ要因に

業種別にみると、13業種のうち、9業種で前月比が増加し、前月に続き幅広い分野で拡大した。特に自動車・同部品は1.6%増の1,391億ドルで、最大の押し上げ要因だった。9月30日の連邦政府の電気自動車(EV)に対する税額控除の期限切れを前に、駆け込み需要が発生した可能性がある(2025年8月7日記事参照)。そのほか、無店舗小売りは0.8%増となり、アマゾンが7月に実施した有料会員向けの大規模セール「アマゾン・プライムデー」に対抗し、大手小売業者のウォルマートやターゲットなども同時期にセールイベントを実施したことがオンライン販売を押し上げた可能性が高い(2025年7月15日記事参照)。他方で、輸入依存度の高い建材・園芸用品や家電などでは足元での価格上昇が進み、いずれも減少に寄与した。また、小売り統計で唯一のサービス項目のフードサービスは前月の0.6%増から0.4%減に転じ、消費者が外食を控える傾向がみられた。

今回の結果について、米保険大手ネーションワイドのチーフエコノミスト、キャシー・ボストジャンシック氏は「ここ数カ月の個人消費者支出の改善にもかかわらず、そのペースは2024年の2.8%(注)を大きく下回っている。さらに、関税による価格上昇が消費者へ転嫁され、労働市場が引き続き軟化していることから、今後数カ月間、家計支出は引き続き逆風にさらされる」と予想した(ヤフーファイナンス8月15日)。

消費者マインドは前月よりやや改善し、民間調査会社コンファレンスボードが7月29日に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした7月の消費者信頼感指数は97.2(6月:95.2)と2.0ポイント増加し、2カ月ぶりの高水準となった。内訳では、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は131.5(6月:133.0)となり、前月から1.5ポイント減少した。他方、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は74.4(6月:69.9)に増加し、5カ月ぶりの高水準となった(添付資料図参照)。

同社のグローバル指標担当シニアエコノミスト、ステファニー・ギチャード氏は「7月は、将来に対する悲観的な見方が幾分後退し、全体的な信頼感がわずかに改善した」とした上で、雇用環境は不透明感が強まっていると指摘した。7月の米国の雇用統計は労働市場の減速を示す内容(2025年8月4日記事参照)となり、同氏は「現在の雇用機会に関する消費者の評価は7カ月連続で低下し、2021年3月以来の低水準に落ち込んだ。特に、7月には18.9%の消費者が仕事を見つけるのが難しいと回答し、1月の14.5%から増加した」と述べた。

(注)食品・エネルギー価格変動の影響を除く、米国の個人消費支出価格指数の上昇率。

(樫葉さくら)

(米国)

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