米ミシガン州が東京でイノベーション投資セミナー開催、日本企業とのエコシステム連携を強調

(米国、日本)

調査部米州課

2025年09月05日

ジェトロは9月3日、モビリティ分野を中心に米国ミシガン州のイノベーション・エコシステムと投資環境を紹介するため「米国ミシガン州・イノベーションセミナー」を東京で同州と共催した(注1)。日本企業関係者ら約80人が参加したほか、ネットワーキングセッションでは、参加日本企業と同州政府、企業、大学との28件の個別面談も行われた。ジェトロの石黒憲彦理事長が開会あいさつを行い、自動車産業とその周辺分野の新技術を前進させる中心地としての同州の魅力に言及した(注2)。

ミシガン州のグレッチェン・ウィットマー知事(民主党)は、米国の経済政策が不透明な状況でも、長年築かれた同州と日本とのパートナーシップは変わらず、オープンであり続けることを強調した。また、イノベーションの促進を重視する姿勢を示し、高成長企業に投資するイノベーションファンドや自律型ドローンの開発を後押しするイニシアチブの設立といった取り組みを紹介した。

写真 ミシガン州のウィットマー知事(ジェトロ撮影)

ミシガン州のウィットマー知事(ジェトロ撮影)

ジェトロ・シカゴ事務所の中川崇所長は、ミシガン州のビジネス環境について、自動車産業の集積に加え、デトロイトとミシガン大学を擁するアナーバーという近接する2大都市が同州のイノベーション・エコシステムの成長を牽引していることを説明した。また、ジェトロがデトロイトのアクセラレーター「industry 4.0」と提供する国内スタートアップ向け海外展開支援プログラム「グローバル・スタートアップ・アクセレレーションプログラム」(GSAP)(注3)を紹介し、この事業への日本企業の参加が増えている理由に、ミシガン州に製造現場や意思決定者が集積していることを挙げた。

基調講演を行ったミシガン州経済開発公社(MEDC)のイノベーション・エコシステム最高責任者ベン・マルチオナ氏は、ミシガン州の強みが自動車産業にとどまらないことを強調し、2018年以降に同州が輩出した6社のユニコーン企業(注4)はモビリティ分野のほか、サイバーセキュリティーやフィンテック、マーケットプレイス、ライフサイエンス分野の企業だと述べた。

同州でビジネスを展開する日系企業として、トヨタ・モーター・ノース・アメリカのニック・シタルスキー統合車両システム担当副社長は、優れた人材や教育機関の存在、リーズナブルなコストをミシガン州の魅力として挙げ、人材育成やSTEM(科学、技術、工学、数学)教育での同州とのパートナーシップの重要性について述べた。

ミシガン大学のケリー・セックストン研究担当副学長は、日本に進出するミシガン大学発スタートアップや、トヨタ自動車や小野薬品工業とのコラボレーション事例に触れ、豊富な産学連携の実績を示した。

(注1)ミシガン州は米国中西部の五大湖沿いに位置する。州人口は1,014万人(2024年7月推計)。州都はランシング、主要都市デトロイトは米国自動車大手のフォード、ゼネラルモーターズ(GM)が周辺に本社を構えるなど、自動車産業の世界的集積地を形成している。

(注2)米国では各州政府も独自に外資誘致インセンティブを有する場合が多い。ジェトロは、米国への進出や拠点拡大時、州政府などと連携した工場設立や研究開発拠点の設立に向けた立地選定支援サービスを提供しているほか、ミシガン州を含む各州政府から日本企業向けのブリーフィング動画を公開している。

(注3)ジェトロが海外のトップアクセラレーターと連携して提供する、国内スタートアップ向けのアクセラレーションプログラム。詳細はジェトロのウェブサイトを参照。

(注4)評価額10億ドル以上で未上場のスタートアップ。

(新田沙織)

(米国、日本)

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