外資規制を強化する政令施行
(フランス)
パリ発
2024年01月10日
フランスで外資規制を強化するデクレ(政令)が1月1日に施行された。EU域外企業によるフランス上場企業の経営権掌握について、事前届け出の基準となる議決権を25%から10%に引き下げる特例措置を恒久化するととともに、フランスの安全保障の観点から外資規制の適用範囲を広げる(経済・財務・産業およびデジタル主権省プレスリリース12月29日付)。
議決権引き下げの恒久化は、米国のインフレ削減法(IRA)の実施に対し、欧州の利益をより考慮する観点から、ブリュノ・ル・メール経済・財務・産業およびデジタル主権相が2023年1月に発表していた(2023年5月19日記事参照)。
適用範囲の拡大は、2023年8月24日に行われたフランスの経済・産業政策に関するスピーチで予告されていた。これまで外資規制の適用外だった機微分野で活動する外国籍企業(entités de droit étranger)のフランス支店(succursales)の経営権掌握に適用が拡大された。
規制産業分野については、中国が2023年8月から実施したガリウム・ゲルマニウム関連製品の輸出規制に対応し、国益と製造業の主権確保に必要な重要原材料の採掘、加工、リサイクルに係る事業活動を追加した。
フォトニクス(光工学)や低炭素エネルギーの生産技術に係わる研究開発事業についても、同技術が規制対象分野への利用を目的とする場合は、外資規制の対象となる。また、刑事施設のセキュリティー関連事業も規制対象分野に追加した。
ル・メール大臣は12月29日のプレスリリースで、外資規制強化により「競争が激化する国際経済情勢の中で、フランスの製造業と技術分野の基本的な国益と主権を守り続ける」意思を表明した。
なお、政府は2023年10月2日、外国企業による直接投資に係る手続きの簡素化に向け、外資規制に特化したプラットフォームを開設したと発表した(国庫総局のページ)。同プラットフォームを利用したオンラインでの事前認可申請が可能になった。
(山崎あき)
(フランス)
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