中国、貿易救済措置における反規制回避調査規則の意見募集稿を発表
(中国)
北京発
2025年08月01日
中国商務部は7月30日、「貿易救済措置における反規制回避調査規則」の意見募集稿(草案)を発表し、8月29日までの期間で意見募集を開始した。同草案は「対外貿易法」「関税法」「アンチダンピング条例」「反補助金条例」などの関連規定に基づいて起草した。
草案では、商務部を調査機関とし、同規則に基づいて調査を実施し、法に基づいて反規制回避措置を講じるとしている。なお、同規則での「規制回避」とは、製品または貿易形態を変更するなどの手段によって中国に輸出を行い、関連する貿易救済での措置(注1)の実施効果を損なう行為を指すとしている。同規則では規制回避の形態として、中国での加工・組み立てや、第三国・地域で加工・組み立てを実施後に中国へ輸出する方法、第三国・地域を経由して中国へ送る方法、低税率企業を経由する方法(注2)、製品に対して形状や外観、機能などの軽微な変更を行った後に中国へ輸出する方法などを示している。
草案では、調査の結果、規制回避行為と認められた場合には、貿易救済措置の対象範囲の拡大などの措置を講じることができると定めた(注3)。なお、これらの措置はさかのぼって適用することも可能としているが、反規制回避調査の立案日以前には適用することができないとしている。
また、草案では、調査機関による調査開始以降は、関連する輸入製品に対し、輸入登記などの措置を必要に応じて講じることができるとした。このほか、反規制回避調査は通常、立案日から12カ月以内に終了することとし、調査の最終裁決を行う前には、根拠となる基本的事実を公表し、利害関係者に対して通常10日以上の意見提出期間を与えることとしている。
中国商務部による反規制回避調査の事例としては、3月4日に開始した一部の米国産光ファイバーに対する調査がある(2025年3月6日記事参照)。新華社によると、この米国産光ファイバーに対する調査は、中国で初の反規制回避調査となっている。この件は、中国企業が反規制回避の調査申請を提出したことに基づく。申請では、近年、米国の光ファイバー製造業者または輸出業者が関連する光ファイバー製品の高い互換性、類似性、相互代替性を利用し、HSコードを変更することにより、既存のアンチダンピング(AD)措置を回避しているとしている。また、AD措置が取られたHSコードに基づく米国製品の輸入数量は減少した一方、AD措置が取られていないHSコードに基づく製品、つまり、反規制回避調査の今回対象となった製品の輸入数量は増加し、国内産業が被害を受け、既存のAD措置の効果が著しく損なわれていると主張していた(「新華社」3月4日)。
(注1)中国の貿易救済措置については、ジェトロの制度情報「中国 貿易管理制度 輸出入管理その他 貿易救済措置」を参照。
(注2)草案第8条では、(中国の)貿易救済措置の対象となった国・地域の生産者・輸出者が当該国・地域で、相対的に低い税率が適用されている生産者・輸出者を通じて、中国に貿易救済措置の対象となっている製品を輸出することを指すとしている。
(注3)草案第11条では、規制回避行為と認定した場合、次の措置を取ることができるとしている。
- 貿易救済措置の適用対象を同措置の対象国・地域から輸入する部品・原材料に拡大。
- 貿易救済措置の適用対象を第三国・地域から輸入する製品に拡大。
- 貿易救済措置の適用対象を同措置の対象国・地域から軽微な改変後に輸入された製品に拡大。
- 低税率企業を通じて輸出した場合、関連する輸出者の税率を貿易救済措置の対象国・地域の最高税率を超えない水準まで引き上げ。
- 調査機関が貿易救済措置の実施効果を保障する上で合理的と認めたその他の措置。
(亀山達也)
(中国)
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