フィリピンへの相互関税は19%に、現地日系企業は冷静

(フィリピン、米国)

マニラ発

2025年08月18日

米国のドナルド・トランプ大統領は7月22日(フィリピン時間は23日)、フィリピンへの相互関税を19%とすると発表した(2025年7月23日記事参照)。フィリピンは7月上旬に20%の税率を提示された後、複数の経済閣僚が訪米したほか、7月20日にはフェルディナンド・マルコス大統領が訪米し、米国との交渉を行った(2025年7月15日記事参照)。その結果を受け、マルコス大統領は「米国からの自動車、大豆製品、小麦、医薬品の関税はゼロになる」ことを明言し、「今後様々な製品や輸出入について、詳細を詰める必要がある」とコメントした。

現地報道によると、フィリピン貿易産業省(DTI)と投資・経済担当大統領特別補佐官室(OSAPIEA)は共同声明を発表し、政府は米国との協議を継続し、国内産業保護に注力しているとあらためて強調した。フレデリック・ゴー投資・経済担当大統領特別補佐官は、米国からの輸入関税が0%になることで、大豆製品や小麦などの国内価格の引き下げにつながると述べた。一方、コメ、トウモロコシ、砂糖、豚肉、鶏肉、水産物などの主要産品に対する関税は維持される見込みだ(7月25日付「ビジネス・ワールド」紙)。

ASEAN主要国との税率差は縮小

4月時点では、フィリピンは17%というASEAN諸国内で2番目に低い税率を提示されており、より高い税率を提示されている競合国からの製造拠点移管が期待されていた(2025年4月14日記事参照)。しかし、米国で7月31日に署名された相互関税に関する大統領令では、タイ、インドネシア、マレーシア、カンボジアが19%、ベトナムが20%となり、フィリピンと他のASEAN主要国の税率差は縮小した。

なお、ジェトロが実施したヒアリング(8月4~8日)に応じた在フィリピン日系製造業企業の間では、米国向けを主な輸出先とする企業は少なく、大きな影響を懸念するには至っていない。米国向けに輸出する企業でも、ASEAN主要国との税率差や米国の政策方針、生産地変更に要する時間を踏まえると、サプライチェーン変更の予定はない、との声があがった。

(西岡絵里奈、アギラー・パールホープ)

(フィリピン、米国)

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