米運輸省、EV充電プログラムを継続、改定ガイダンスを発表
(米国)
ニューヨーク発
2025年08月13日
米国運輸省は2025年8月11日、国家電気自動車(EV)インフラプログラム(NEVIフォーミュラプログラム)に関する改定ガイダンスを発表した。複雑な手続きにより充電ステーション整備が進まなかった状況を改善するとし、改定は即日発効した。連邦高速道路局(FHWA)が今後の追加見直しに向けてコメントの募集を開始した。
NEVIフォーミュラプログラムは、バイデン前政権下の2021年11月に成立した超党派インフラ投資雇用法(IIJA)に基づき、各州のEV急速充電設備の整備を支援する総額50億ドルの助成制度だ。運輸省は2022年2月に発表した運用方法を示すガイダンスにおいて、全州への助成の割り当てを決定し、合計150件以上のプログラムを承認していた(2022年2月16日記事参照)。一方、トランプ政権は2025年2月6日、「米国のエネルギーを解き放つ」と銘打った大統領令に基づき資金凍結を指示。これに対し一部の州が違法として提訴し、連邦地裁は6月、凍結の一部差し止めを命じていた(2025年6月26日記事参照)。
運輸省によると、従来のガイダンスは計画策定や承認プロセスが煩雑で、実際には全体予算の約84%が執行されないまま滞留していた。改定ガイダンスでは、州による予算執行計画の要件を法令上の最低限に絞り、承認手続きや関係者協議の義務を大幅に緩和。充電ステーション間の間隔を柔軟に認め、送電網の統合や再生可能エネルギー要件を最小化し、消費者保護や防災計画、環境・地形への配慮などに関する記載要件の撤廃も盛り込んだ。また、設置場所の所有者が運営者を兼ねる方式を推奨し、州内の公共道路上であればNEVIの資金を活用できるようにした(注1)。
ショーン・ダフィー運輸長官は「バイデン・ブティジェッジ政権(注2)は、公約にもかかわらずEV充電器の設置に失敗した」と批判。その上で、「私はグリーンエネルギーへの補助には賛成できないが、議会の意思を尊重し、このプログラムが連邦資源を効率的に活用することを確実にする」と述べた。これまでEV推進には懐疑的な姿勢を示してきたが、既に予算配分が決まっていることや、司法判断、インフラ整備による地元での経済効果などを考慮したとみられ、「議会決定の尊重」と「効率化」を掲げつつ、ジョー・バイデン前大統領が成し遂げられなかったことを遂行する、との立場からプログラムを継続させるもようだ。
(注1)従来のガイダンスでは、「代替燃料回廊(Alternative Fuel Corridors)」での設置が条件だった。
(注2)前政権のバイデン大統領とピート・ブティジェッジ運輸長官を指す。
(大原典子)
(米国)
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