米連邦取引委員会、カリフォルニア州のトラック排ガス削減協定を反トラストの懸念で調査

(米国)

ロサンゼルス発

2025年08月19日

米国連邦取引委員会(FTC)は8月12日、カリフォルニア州大気資源委員会(CARB)とトラック・エンジン協会(EMA、本部:イリノイ州シカゴ)が締結していた排ガス削減協定「クリーン・トラック・パートナーシップ」について、反トラスト法(独占禁止法)違反の可能性を踏まえて行われた調査結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

「クリーン・トラック・パートナーシップ」は2023年に締結した排ガス削減協定で、ゼロエミッション車(ZEV)トラックの販売と温室効果ガス排出量を制限するCARBの一連の規制を順守することに合意していた(2023年7月12日記事参照)。

FTCは、EMA加盟企業の中でも、米国の大型トラック市場の99%を占有する4社(注1)が「クリーン・トラック・パートナーシップ(CTP)」締結に合意したことが、複数の反トラスト法上の懸念を引き起こしたとした。具体的には、次の3点をあげている。

  1. CTPが製造業者に対し、内燃機関エンジン(ICE)ではなく、排ガスゼロのエンジンの製造を義務づけ、カリフォルニア州でのZEV販売義務が無効化された後も(2025年6月17日記事参照)、協定による制限が維持されたこと。
  2. あるトラックメーカーが競合するトラックメーカーに対し、制限を課すことを妨げていなかったこと。
  3. 公選された役職者が規制の内容を変更する余地がなく、政治的にも柔軟性が欠如している点を挙げた。

調査対象となった4社は、CTPは強制力がなく、他社に対して協定の条件を強制したことも、今後強制することもないとの書簡をFTCに提出し、大型トラック販売において独立して行動するとした。またEMAも、今後はCTPのような合意形成に向けた交渉や新たな合意の締結を行わない誓約をしたことで、FTCは調査を終了した。

FTCは調査終了の声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の中で、消費者の利益を保護する観点から、要求に応じてさらなる措置を講じる権限を持つとした上で、今回の調査が自由かつ公正な競争の継続を保証するとした。

なお、調査対象となった4社は8月11日、2025年6月のカリフォルニア州でのZEV販売義務無効化後も、CARBがCTPを通じて排出規制を強制したとして、CARBなどを提訴外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。バイデン政権下で脱炭素化の取り組みが進んでいたカリフォルニア州での今回の提訴について、CTP締結の支援をしたCARBの元副執行役兼副首席顧問のクレイグ・セガル氏は「トラック会社が、連邦政府の方向性が不透明だった中で、EVトラック販売とインフラ整備の資金調達を支援する世界で4番目(注2)の経済規模を誇る州との合意に何年も取り組んできたことを想像してほしい。そして、その協定を破棄することで規制当局を苦しめ、自社の株主価値を破壊することになった」とし、脱炭素化に逆行するような取り組みを非難した。

(注1)ダイムラー・トラック、インターナショナル・モーターズ、パッカー、ならびにボルボ・グループ。

(注2)カリフォルニア州の経済規模は、米国経済分析局(BEA)が発表した2024年のドル換算の名目GDPで約4兆1,000億ドルに相当し、IMF発表の各国の2024年の名目GDPと比較すると、米国、中国、ドイツに次ぐ規模に相当する(2025年4月25日記事参照)。

(サチエ・ヴァメーレン) 

(米国)

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