トランプ米大統領、カリフォルニア州のZEV販売義務を撤回

(米国)

ニューヨーク発

2025年06月17日

米国のドナルド・トランプ大統領は6月12日、カリフォルニア州のゼロエミッション車(ZEV、注1)販売義務の無効化を含む複数の共同決議に署名し立法化した。即日発効となった。

今回署名したのは、ライトビークル(乗用車、小型トラック)を対象としたZEVの販売義務や排ガス規制を含む「アドバンスト・クリーン・カーII(ACCII)規制(H.J.Res.88外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」のほか、大型車を対象とした「アドバンスト・クリーン・トラック規制(H.J.Res.87外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」、「オムニバス窒素酸化物(NOx)規制(H.J.Res.89外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」に関し、環境保護庁(EPA)が承認したカリフォルニア州での連邦規制の適用免除を取り消す内容の共同決議だ。これらは連邦政府が制定した「規則」を連邦議会で失効させることのできる「議会審査法(CRA)」に基づき、上下両院で可決されていた(2025年5月7日記事2025年5月23日記事参照)。

​​トランプ氏は今回の適用免除取り消しの根拠として、大気は州をまたぐ性質を有するため、連邦政府が統一して定めるべきで、「州ごとに自動車規制をばらばらに制定することは現実的ではない」ことを挙げた。また、大気浄化法209条はEPAに対し、「切実かつ特別な地域的問題に対処するために限り、カリフォルニア州に適用免除を認める権限を与えている」とし、温室効果ガス(GHG)排出規制はこれに当たらないとした。CRAではさらに、「共同決議の対象となった規則は『実質的に同一の形式』では再発行できない」とされていることから(2024年5月30日付地域・分析レポート参照)、将来にわたって電気自動車(EV)の販売義務化に関するカリフォルニア州の適用免除が禁じられる可能性も示唆した。

自動車イノベーション協会(AAI)のジョン・ボゼーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は、EV販売義務化は「達成不可能で、極めて非現実的」であり、「顧客が求めているのは、効率の良いガソリン車、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)といった幅広い選択肢だ」と述べた。その上で、「トランプ大統領がこの問題を認識し、対策を講じ、EV義務化が米国の自動車産業に深刻な打撃を与える前に、撤廃を支持し、顧客の選択を擁護し、米国の排出ガス規制に一定のバランスを取り戻すことに貢献した」と称賛した。全米トラック業界なども同様のコメントを発表している。

一方、カリフォルニア州のボブ・ボンタ司法長官は6月12日、ACCIIを採用する州のうち、10州(注2)の司法長官と連携し、EPA長官に対し、同州に対する適用免除の承認はCRAの対象である「規則」には当たらないと訴え、共同決議の違法性を連邦地裁に提訴した。米国会計検査院(GOA)や上院議事規則管理者(Senate Parliamentarian)も、CRAが今回の適用免除をめぐる措置には適用されないとの立場を示している(注3)。

(注1)クリーンビークル(CV)と同義。対象となる車種は、バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)。

(注2)コロラド州、デラウェア州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ニューメキシコ州、ニューヨーク州、オレゴン州、ロードアイランド州、バーモント州、ワシントン州。

(注3)GAOは、連邦議会の下で政府の活動や支出の監査を行い、効率性や有効性を評価する超党派の独立機関。議会審査法では、CRAの対象となる「規則」を評価し報告する役割を担う。上院議事規則管理者は、上院の議事規則に関する専門家で、議事進行や手続きに関する助言を行う。

(大原典子)

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