ポーランド、カロル・ナブロツキ大統領が就任
(ポーランド)
ワルシャワ発
2025年08月14日
ポーランドで8月6日に大統領就任式が行われ、カロル・ナブロツキ氏が大統領に就任した。ナブロツキ氏は、保守野党「法と正義(PiS)」の擁立候補(無所属)として大統領選挙に立候補し、6月1日に実施された決選投票で、リベラル派の中道与党「市民プラットフォーム(PO)」候補でワルシャワ市長のラファウ・トシャスコフスキ氏を僅差で破り、当選していた(2025年6月3日記事参照)。
同大統領は就任式のスピーチで、「主権国家としてのポーランドを望む人々の声となる」「EUがポーランドの意思決定権限を奪うことには決して同意しない」と述べ、EUへの懐疑的な姿勢を見せた。同大統領の公約「プラン21」では、「ポーランドファースト」「グリーン・ディールの廃止」「(EU)移民協定の廃止」などを掲げており、EUとのあつれきが生じることが想定される。一方で、「ポーランドの最も重要な同盟国の1つである米国との2国間同盟を支援する」と述べ、親米路線を明確にした。
安全保障に関して、ポーランドは中・東欧地域におけるNATOの東方戦線の強化を担う責任があるとし、「ポーランド軍がEU内で最大のNATO部隊となるよう努める」と述べた。ポーランドの防衛費は2025年にGDPの4.7%に達する見込みで、NATO加盟国の中でも最高水準となっている。なお、スピーチでウクライナが言及されることはなかった。同大統領は以前、ウクライナのEU、NATO加盟に反対すると発言している(2025年2月27日付地域・分析レポート参照)。
そのほか、同大統領はポーランド交通ハブプロジェクト(CPK、注)に関して、本来のかたち(前与党PiSの計画)に戻す法案を提出すると宣言した(8月7日に提出済み)。また、開発投資および財政について話し合うため、8月中にドナルド・トゥスク首相や関係大臣らを閣僚理事会に招く用意があると述べた。
中道のトゥスク連立政権は、連立政権内の対立、公約実現の遅れ、大統領選での敗北などが原因となり、政権支持率は32%(調査機関CBOS、7月)と低迷している。トゥスク首相は求心力の回復を図るため、7月23日に内閣改造を実施し、大幅な体制刷新を行った(2025年7月29日記事参照)。大統領には議会法案に対する拒否権があるため、「ねじれ関係」が続く政権は厳しい政権運営を迫られる。
(注)ポーランド中央部に新たな空港を建設し、鉄道と道路のアクセスを整備するフラグシッププロジェクトのこと。
(金杉知紀)
(ポーランド)
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