ポーランド大統領選の決選投票、野党候補が僅差で勝利
(ポーランド、EU)
ワルシャワ発
2025年06月03日
6月1日に実施されたポーランド大統領選挙の決選投票(2025年5月22日記事参照)で、保守野党「法と正義(PiS)」が擁立する無所属のカロル・ナブロツキ候補が、リベラル派の中道与党「市民プラットフォーム(PO)」候補でワルシャワ市長のラファウ・トシャスコフスキ氏を僅差で破り、当選した。国家選挙管理委員会(PKW)によると、得票率はナブロツキ氏50.89%、トシャスコフスキ氏49.11%で、約37万票差と極めて接戦の結果となった。
ナブロツキ氏は「ポーランド・ファースト」や「主権の回復」といったスローガンを選挙戦で掲げ、保守層やEU懐疑派の支持を集め、右派ポピュリズムの波に乗るかたちで勝利を収めた。ドナルド・トゥスク首相率いる中道・親EU派の政権との間で、政治的なねじれ関係が維持されたままとなる。大統領には議会法案に対する拒否権があるため、司法改革や社会政策などの政府の主要政策が停滞する懸念が高まっている。連立政権内でも、移民政策や同性パートナーシップ、妊娠中絶の自由化などを巡って意見が対立しており、厳しい政権運営を迫られることになる(2025年2月27日付地域・分析レポート参照)。
ナブロツキ氏の大統領就任に対するビジネス面での影響として、「ポーランドのEU資金に不確実性をもたらすのではないか」とする当地日本人ビジネスパーソンの声が聞かれる。PiSによる前政権下では「法の支配」などを巡って欧州委と対立していたため、EUはポーランドに対し、EU資金の分配を一時的に停止していた(2024年3月12日記事参照)。
決選投票を控えた5月25日には、ワルシャワ市中心部で各候補者を支援する行進や集会が行われるなど、国民の高い関心を集めていた。今回の投票率は71.63%で、ポーランドの大統領選史上、過去最高となった。
(余田知弘、金杉知紀)
(ポーランド、EU)
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