トゥスク政権、内閣改造を発表

(ポーランド)

ワルシャワ発

2025年07月29日

ポーランドのドナルド・トゥスク首相は7月23日、内閣改造を実施した(添付資料表参照)。閣僚数を26人から21人に減らし、閣僚の半数近くを入れ替え、新たにエネルギー省、財務・経済省を設立するなど、大幅な体制刷新を行った。直近の世論調査(調査機関CBOS、7月)によると、トゥスク政権の支持率は32%と低迷し、不支持率は48%に上る。連立政権内の対立や、6月の大統領選挙での敗北(2025年6月3日記事参照)などを原因に低下した求心力の回復を狙う。

財務省と開発・技術省を統合し、アンジェイ・ドマンスキ財務・経済相が経済政策を統括する。産業省と気候・環境省の一部の役割を統合し、ミウォシュ・モティカ大臣率いるエネルギー省を新設した。産業省が管轄していた炭鉱、原子力などと、気候・環境省が管轄していた電力、再生可能エネルギーを集約させる。再編による体制のスリム化を行い、マネジメントの効率化、透明性の向上を目指す。

そのほか、ラドスワフ・シコルスキ外相が副首相を兼任する。トゥスク首相は、ロシアの脅威を念頭に、ウクライナへの協力に向けたさらなる外交強化を行うと強調した。現地ニュースメディアのポリティカ・インサイト(7月24日付)によると、背景には8月6日に予定されている次期大統領の就任がある。保守野党「法と正義(PiS)」派のカロル・ナブロツキ次期大統領は、ウクライナのEU、NATO加盟に反対するなど、これまで良好だったウクライナとの関係構築に消極的な姿勢を見せている。ウクライナ支援に積極的なアンジェイ・ドゥダ現大統領の役割をシコルスキ外相が引き継ぐかたちとなる。

今回、トゥスク首相が内閣改造を発表し、シコルスキ外相を副首相に任命(外相は引き続き兼任)した理由として、現政権の支持率低下や大統領選挙で反対派候補が勝利したことを受け、外交政策で差別化を図るシコルスキ氏の政権内での発言力と政策調整力を高めるためだとする見方がある。リベラル系シンクタンク、ステファン・バトリー財団のクジシュトフ・イズデブスキ氏は「ナブロツキ次期大統領への戦略的な対応」(TVP、7月23日付)と分析している。

(金杉知紀、余田知弘)

(ポーランド)

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