メキシコの第2四半期GDPは全体的にプラス成長も、鉱工業は不調

(メキシコ)

調査部米州課

2025年08月28日

メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)は8月22日、2025年第2四半期(4~6月)の産業分野別実質GDP成長率PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(注1)を発表した。GDP全体では前年同期比0.0%、季節調整済み前期比は0.64%となった。第1四半期(1~3月)(2025年5月27日記事参照)に引き続きプラス成長を維持した。

前年同期比の成長率を産業別にみると、農牧・林業・水産は2.0%、サービス産業は0.9%のプラス成長だったが、鉱工業は1.7%のマイナス成長となった(添付資料表1参照)。なお、季節調整済み前期比では、鉱工業(0.71%)とサービス産業(0.81%)が2期連続のプラス(注2)を維持した一方、農牧・林業・水産が2.39%のマイナスに転じた(添付資料表2参照)。

鉱工業の内訳をみると、鉱業(前年同月比8.2%減)、電気・ガス・水道(3.1%減)、建設(1.7%減)、製造業(0.5%減)がいずれも前年同期比マイナス成長となった。特に鉱業の落ち込みが大きく、季節調整済み前期比でも5期連続のマイナスだった。背景には、石油公社(PEMEX)による生産減などがあるとみられる。輸出需要に大きく影響を受ける製造業では、米国による追加関税発動の影響が出始めているようだ。特に、通商拡大法232条に基づく追加関税25%の対象となっている自動車・同部品を含む輸送機器製造では、前年同期比4.1%減とマイナス成長を記録した。また、2025年4月下旬の聖週間(セマナ・サンタ)期間中は多くの生産活動が一時的に停止したが、2024年は聖週間が3月末だったことが影響し、前年同期比の数値が押し下げられたとみられる。

サービス産業の内訳をみると、卸売業が前年同期比7.5%減と大きく落ち込んだ一方、小売業が3.3%増と好調だった。前期比でも、卸売業の1.44%減に対し、小売業は1.57%増と対照的な結果になった。そのほかは全体的に好調な結果となり、特に専門サービス(前年同期比10.0%増)とビジネス支援(13.9%増)で大きな成長がみられた。

下半期の見通しは不透明感も

2025年上半期では、GDP全体で前年同期比0.4%の成長となり、通年で1.4%成長だった2024年に比べて経済成長は減速している。コンサルティング会社のオックスフォード・エコノミストのアナリストは、米国の関税政策が輸出と投資に悪影響を与え、下半期のメキシコ経済成長は停滞すると予測する(「エル・フィナンシエロ」紙8月25日付)。メキシコを取り巻く通商環境が不安定さを増す中、先が見通せない状況が続いている。

(注1)INEGIは、2023年第2四半期(4~6月)から国民経済計算の基準年を2013年から2018年に変更したため、数値が過去にさかのぼって修正されており、2023年第1四半期(1~3月)以前の実質GDP成長率(2023年5月29日記事参照)の数値とは継続性がない。

(注2)5月の発表では、第1四半期は鉱工業とサービス産業で前期比マイナスとなっていたものの、8月の発表で数値がプラスに修正された。

(加藤遥平)

(メキシコ)

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