トランプ米政権、輸出管理のライセンス料徴収の適用拡大を示唆、議会は反発
(米国、中国)
ニューヨーク発
2025年08月18日
米国のトランプ政権は、米国半導体大手のエヌビディアおよびアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の特定の人工知能(AI)半導体製品に輸出許可(ライセンス)を発行するにあたり、当該製品の販売収益の15%を徴収することで各社と合意した(2025年7月18日記事、2025年8月18日記事参照)。いわば「ライセンス料金」を徴収する手法について、政権からは今後の適用拡大を示唆する発言が出る一方、議会からは反発の声があがっている。
ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は8月12日の記者会見で、「創造的なアイデアであり解決策だ」「おそらく将来的に他の企業にも(同手法の適用が)拡大されるだろう」と述べた(政治専門紙「ポリティコ」8月12日)。財務省のスコット・ベッセント長官も8月13日に現地メディアのインタビューで、「今後、(同手法は)他の業界でも見られるようになるだろう」「現時点では特殊だが、こうして手法が開発され試用が実施されたのであれば、なぜ(同手法の適用を)拡大しないのか」と述べた(ブルームバーグ8月13日、注)。
連邦議会からは、超党派で反発の声があがる。下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会」で委員長を務めるジョン・ムーレナー議員(共和党、ミシガン州)は、ライセンス料金の徴収について「懸念を抱いている」「法的根拠にも疑問が残る」などと述べた(ポリティコ8月11日)。また、同委員会の少数党筆頭委員のラジャ・クリシュナムルティ議員(民主党、イリノイ州)も8月11日に声明を発表し、「国家安全保障を損なう輸出管理の危険な乱用だ」「輸出管理は収益を上げるためのものではない」「中国や米国の同盟国に対し、米国の国家安全保障の原則が相応の対価と引き換えに交渉可能であるというシグナルを送ることになる」などと批判した。
なお、同委員会は8月14日にSNS投稿を通じて、米中の通商協議の優先事項のリストを示した。2020年に締結した米中経済・貿易協定(いわゆる第1段階の合意)の確実な履行を中国に求めるべきと主張したほか、米国の先端AI半導体の中国への販売を将来の合意に含めてはならない、などと政権を牽制した(添付資料表参照)。
(注)トランプ政権はエヌビディアおよびAMD製のAI半導体のほか、半導体関連ソフトウエア、航空機部品、エタンなどの中国へのライセンスを見直している。今後、これら分野の企業や製品のライセンスの発効に際して、今回と同様のライセンス料の徴収が適用される可能性もある。トランプ政権の輸出管理政策については、2025年8月6日付地域・分析レポート参照。
(葛西泰介)
(米国、中国)
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