EU・中国サミット、4,000億ユーロ規模の貿易赤字是正に向けた協力を確認

(EU、中国)

ブリュッセル発

2023年12月19日

EUと中国の第24回首脳会談が12月7日、北京市で開催され、欧州理事会(EU首脳会議)のシャルル・ミシェル常任議長と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が中国の習近平国家主席と会談した。李強首相とも意見を交わした(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。前回のサミットはロシアによるウクライナ侵攻が主要論点となったが(2022年4月4日記事参照)、今回は、前回の会談以降に開催してきた貿易・経済、気候変動、環境、デジタル、人権、外交戦略に関するハイレベル対話を通じて、互いに安定した建設的な関係性を望んでいることを確認した。また、国際ルールに基づく秩序の尊重を確認した(中国側の発表は2023年12月14日記事参照)。

EUにとって、中国は重要な経済パートナーであり、1日当たり約23億ユーロ規模の貿易関係にある。一方、EUの対中貿易赤字は約4,000億ユーロに上るとして、貿易均衡の重要性を強調。中国政府の補助金や過剰生産が経済に与える影響を指摘した。EUは引き続き、EU域内企業の競争力強化に努めるとすると同時に、中国側に対して、外国企業に対する参入障壁の撤廃、投資環境の改善などを求めた。

会談後にEUが開いた記者会見では、ミシェル常任議長が、中国による黒鉛の輸出制限がEUの主権や戦略的自律に与えている影響を引き合いに、EUは引き続き供給の多角化、特定地域への依存軽減に取り組むとした。保護主義やデカップリングではなく、互いがWTOのルールに基づいた均衡な貿易関係を確立することが欠かせないと強調した。フォン・デア・ライエン委員長も、貿易均衡に関し、中国側の協力を確認したと述べた。

気候変動・環境対策では、中国の再生可能エネルギー(再エネ)の拡大への取り組みやメタン排出対策を評価する一方、2030年までに再エネ能力を3倍に拡大し、エネルギー効率を倍増させる宣言外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますへの参画にも働きかけを行った。このほか、デジタル経済、知的財産権、地理的表示などに関する協力強化に関しても確認した。

ロシアによるウクライナ侵攻に関しては、中国が国連安全保障理事会の常任理事国で、ロシアと特別な関係があることから、ロシアに対して戦争を終わらせる働きかけをするよう引き続き中国に求めた。また、イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとの衝突に関しては、ガザ地区の全ての市民の保護、人道的状況の改善、国連安全保障理事会決議第2712号の実行、「二国家解決」に向けた支援を確認した。

(薮中愛子)

(EU、中国)

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