米商務省、中国原産の黒鉛にアンチダンピング・補助金相殺関税の仮決定
(米国、中国、日本)
ニューヨーク発
2025年07月22日
米国商務省国際貿易局(ITA)は7月17日、中国原産のグラファイト(黒鉛)に対するアンチダンピング関税(AD)の賦課の仮決定を発表した。7月22日付の官報
で公示予定だ。これに先立って、ITAは5月20日に中国原産の黒鉛に対する補助金相殺関税(CVD)の賦課の仮決定を発表
し、5月28日付の官報
で公示していた(注1)。一般に、官報公示と同日にAD・CVDの税率に基づく現金預託の課徴が開始される。
AD・CVDは、WTO協定で認められた貿易救済措置の一種だ。ADは、輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング輸出)が輸入国の国内産業に損害を与えている場合に、その価格差を相殺する目的で賦課される。CVDは、政府補助金を受けて生産などされた製品の輸出が、輸入国の国内産業に損害を与えている場合に、当該補助金の効果を相殺する目的で賦課される。
AD・CVD調査から賦課の手続きは、(1)米国国際貿易委員会(USITC)による国内産業の被った損害有無の仮決定、(2)ITAのダンピングや補助金の有無および税率の仮決定、(3)ITAの最終決定、(4)USITCの最終決定の4段階で進められる。ITAとUSITCは2024年12月に負極活物質(AAM)の国内業界団体の請願を受理し、中国原産のAAMに対するAD・CVD調査を開始した。USITCは2025年2月に、中国からの黒鉛の輸入により、国内産業の確立が実質的に遅延しているという合理的な兆候があると仮決定した(手続き第1段階)。これに続きITAは、ダンピングおよび補助金の存在を仮決定した(手続き第2段階)。
AD・CVD対象のAAMの米国関税分類番号(HTSコード)は 2504.10.5000(天然黒鉛)および3801.10.5000(人造黒鉛)。天然黒鉛はリチウムイオン電池の負極材など、人造黒鉛はブレーキ材などの用途に使用される。
ITAの仮決定で設定された、中国原産の黒鉛に対する一般的な税率は次のとおり。
- AD:102.72%
- CVD:11.58%
ただし、特定企業が製造、輸出する黒鉛に関しては、個別に税率が設定されている。複数の日系企業が中国で製造、輸出する黒鉛は、一般的な税率より低く、ADが93.50%、CVDが11.58%に設定された。なお、税率はITAの最終決定で変更される可能性がある。ITAは最終決定をAD・CVDともに2025年12月までに発表予定としている。
AD・CVDのほか、米国は黒鉛を含む中国原産品に対して、2025年2月から段階的に国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく30%の追加関税(注2)を課している。また、中国原産の天然黒鉛に対して、2026年1月から1974年通商法301条に基づく25%の追加関税の賦課を開始する(注3)。加えて、商務省は黒鉛を含む重要鉱物に対する1962年通商拡大法232条に基づく調査も実施しており(2025年4月16日記事参照)、さらに関税が上乗せされる可能性もある。
(注1)ただし、7月2日付官報でCVDの税率の一部が訂正された。
(注2)10%のベースライン関税と違法薬物の流入防止を目的とした20%の追加関税。
(注3)対象HTSコードは、2504.10.10、2504.10.50、2504.90.00(2024年9月17日記事参照)。
(葛西泰介)
(米国、中国、日本)
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