ブラジル産業界、米国追加関税への対応策提案

(ブラジル、米国)

サンパウロ発

2025年07月24日

ブラジル産業界は、米国のドナルド・トランプ大統領が7月9日に行ったブラジルへの50%の追加関税賦課発表(2025年7月11日記事参照)を受け、ブラジル連邦政府に対応策を提案している。全国工業連盟(CNI)は7月14日と15日に開発商工サービス省と面談し、追加関税の適用開始日を90日間延期するよう米国と交渉することを求めた。CNIは、追加関税による潜在的な影響を把握し、外交交渉を通じて両国経済への打撃を最小化するためには、この延期が必要としている。

現地紙「フォーリャ」(7月15日付)によると、ブラジル水産物協会(Abipesca)やブラジル果物輸出業者協会(Abrafrutas)などの農業団体も7月15日に開発商工サービス省と面談し、同様の提案を行った。また、ブラジル政府も同日に公式な対応を行った。ジェラウド・アルキミン副大統領兼開発商工サービス相とマウロ・ビエイラ外相は、米国のハワード・ラトニック商務長官とジェミソン・グリア米通商代表部(USTR)代表に宛てた共同書簡を送付した(注1)。書簡では、50%の追加関税に憤りを示しつつも、「両国にとって相互に受け入れ可能な解決策を探るため、対話の準備がある」と強調した。一方で、アルキミン氏は現地紙「CNNブラジル」(7月15日付)のインタビューで、「(適用開始日の)延期を求める予定はない。7月31日までにこの問題を解決したい」と述べた(注2)。

さらに、Abipescaは7月21日にルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領に対し、水産業向けの融資制度設立を要請した。Abipescaによると、米国への水産物輸出量はブラジルの水産物総輸出量の約70%を占めるため、トランプ政権が発表した50%の追加関税による打撃は大きく、融資制度がなければ解雇や事業停止の可能性が高い(注3)。「CNNブラジル」(7月22日付)によると、財務省では、水産業のみならず、支援を要する全ての産業を対象に、融資制度を一時的に設立することが検討されている。ただし、詳細は未定だ。

(注1)7月15日付の書簡では、ブラジルと米国の貿易状況改善に向けて、ブラジル政府が5月16日に米政府に提案書(機密文書)を提出したものの、回答を受け取っていないことにも言及した。

(注2)トランプ米大統領は7月8日にSNS投稿を通じて、追加関税の適用開始は8月1日で、延期するつもりはないと表明した(2025年7月10日記事参照)。ラトニック商務長官も、米ニュース局CBSニュース(7月20日付)のインタビューで、延期の可能性を否定した。

(注3)Abipescaの提案では、9億レアル(約234億円、1レアル=約26円)の融資額が目安となる。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル、米国)

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