米上院、州によるAI規制禁止条項の削除を可決、カリフォルニア州法への影響回避

(米国)

サンフランシスコ発

2025年07月04日

米国連邦議会上院は7月1日、人工知能(AI)に関する州独自の規制を10年間禁じる条項を削除する修正案を、賛成99、反対1の圧倒的多数で可決した。ドナルド・トランプ大統領が推進する「大きく美しい1つの法案(One Big Beautiful Bill Act)」(2025年6月19日記事参照)に含まれていたこの条項は、2035年まで州によるAI関連法の新設・施行を禁じる内容で、特にAI企業が集中するカリフォルニア州では、法的影響への懸念が強まっていた。同州では既に多数のAI関連法案が成立しており、2024年に制定された「生成AI学習データ透明性法(AB2013)」や、ディープフェイク対策など(2024年10月8日記事参照)が無効化される可能性が指摘されていた。

この規制条項を巡っては、「州ごとのパッチワーク規制は非効率で、イノベーションの妨げになる」として、オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)、防衛テック企業アンドゥリル・インダストリーズのパルマー・ラッキー創業者、ベンチャーキャピタル(VC)大手のアンドリーセン・ホロウィッツのロビイストらが支持を表明していた。また、連邦レベルでも、カリフォルニア州選出で超党派AIタスクフォースの共同議長であるジェイ・オーバーノルテ下院議員(共和党)は、民主党のテッド・リュー下院議員とともに、AIは規制すべきだが、「責任は連邦議会が担うべき」と主張した。

一方、カリフォルニア州議会議員35人(民主党32人、共和党3人)は条項に反対する連名書簡を提出し、この規制条項について「市民の安全や権利を危険にさらし、イノベーションを弱体化させ、州の主権を損なうもの」と主張した。ギャビン・ニューサム知事(民主党)も連邦主導案に反対した。ニューサム知事は6月に発表された「最先端AI政策報告書」で、急速に進展するAI技術に対応するために、州の役割とガードレール的な規制の必要性を強調していた(2025年6月27日記事参照)。共和党を含む37州の司法長官も、連邦による一律的な規制が責任あるAIの使用を確実にする州の努力を妨げるとして懸念を表明していた。

最終的には、民主・共和両党の州政府関係者や消費者保護団体の強い反発を受け、共和党のマーシャ・ブラックバーン上院議員(テネシー州)が提出した当該条項を削除する修正案に、条項の提案者だったテッド・クルーズ上院議員(テキサス州)自身も賛成票を投じることとなった。

(松井美樹)

(米国)

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