IMF金融支援の第4回審査が完了、約3億5,000万ドルを追加支援

(スリランカ)

コロンボ発

2025年07月15日

IMFは7月3日、スリランカへの金融支援パッケージ〔拡大信用供与(EFF)プログラム、4年間で総額22億8,600万SDR(約30億ドル、注1)〕の第4回審査を理事会で承認し、2億5,400万SDR(約3億5,000万ドル)を今回拠出すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同プログラムによる資金援助は今回が5度目で、拠出額は累計12億7,000万SDR(約17億4,000万ドル)となった。審査結果については、IMFとスリランカ政府が2025年4月25日に担当者レベルで合意していた(2025年5月13日記事参照)。

IMFは、スリランカが2025年3月末までの目標のうち、支出の延滞に関する項目を除いて、全てを達成し、5月末までの構造改革目標もほとんど達成したと評価している。また、IMFが理事会での承認条件として求めていた電気料金の改善や自動調整メカニズムの整備については、6月の料金改定時(2025年6月20日記事参照)に達成され、債務再編も完了間近だと評価した。

今後のスリランカ経済の見通しについては、好調な観光業や堅調な製造業と建設業、消費の回復を背景に、2025年の実質GDP成長率見込みについて、前回審査から0.5ポイント増の3.5%に引き上げた。加えて、2025年の物価上昇率の見通しは、エネルギー価格の低下や予想を上回る通貨スリランカ・ルピー高により、前回審査から0.5ポイント減の3.3%に引き下げた。対外経済については、輸入増加による貿易赤字の拡大を見込む一方で、観光収入と海外からの郷里送金増加により、経常収支の赤字額が4,800万ドルにとどまると見込んでいる。

一方で、米国の関税政策によってスリランカの輸出競争力が低下するリスクを指摘し、実質GDP成長率がベースラインシナリオの3.5%から0.25~1.5ポイント下落し得るとの懸念を示した。

その上で、潜在成長力の向上につながる輸出量拡大や輸出先多様化、外国直接投資(FDI)の誘致に向けて、(1)貿易窓口の一本化や自由貿易協定(FTA)の締結、準関税(para tariff、注2)の段階的撤廃などを含む貿易円滑化改革の実施、(2)公共インフラの改善、(3)労働市場の硬直性軽減や女性の労働参加推進、(4)PPP(官民連携)の法整備、(5)FDI規制枠組みの効率化と自由化を促した。

(注1)Special Drawing Rightの略で、特別引出権。通貨ではないものの、その価値はドル、ユーロ、中国人民元、日本円、英国ポンドの5通貨のバスケットに基づいた国際準備資産。

(注2)準関税とは、関税と同様の効果を有し、外国との貿易取引で生じる関税以外の課徴金や手数料などのこと。スリランカでは輸入品に対して、関税に加えて、物品税(Excise Duty)や輸入税(CESS)、付加価値税(VAT)、港湾・空港開発税(PAL)などを課している(スリランカの関税制度参照)。

(大井裕貴)

(スリランカ)

ビジネス短信 d13bf04e64d5212a