EU首脳、具体的な成果なく、新たな対ロシア制裁も合意に至らず

(EU、スロバキア、ハンガリー、米国、ロシア)

ブリュッセル発

2025年07月01日

欧州理事会(EU首脳会議)は6月26日、ブリュッセルで会合を開催した。最優先課題に掲げる競争力強化や防衛力の再構築のほか、中東情勢など幅広い分野に関する総括を採択したものの(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、具体的な成果に乏しい会合となった。

特に対ロシア制裁については、欧州委員会が6月10日に第18弾となる制裁パッケージを提案しており、今回の会合で合意を目指していたものの、一部加盟国の反対によって合意には至らなかった。第18弾制裁パッケージには、ロシアのエネルギー輸出による戦費調達の阻止に向け、天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」関連の決済禁止や、海上輸送されるロシア産原油の上限価格(2022年12月6日記事参照)の引き下げ、ロシアによる制裁回避策「影の船団」(2025年5月22日記事参照)への対策強化のほか、ロシア系銀行の国際銀行間通信協会(SWIFT)システムからの完全排除などが含まれている。

現地報道によると、反対したのはスロバキアとハンガリーだ。ロシア産原油の輸入を継続する両国は、欧州委が別途提案するロシア産ガス輸入禁止法案(2025年5月9日記事参照)に反対しており、第18弾制裁パッケージに賛同する条件として、同法案の取り下げ、あるいは同法案での例外的な取り扱いを求めていた。今回の会合でもスロバキアの賛同は得られず、第18弾制裁パッケージの合意は持ち越しとなった。

また、温室効果ガス(GHG)排出削減の2040年目標(2024年2月14日記事参照)についても議論されたが、設定方法や詳細を巡って加盟国間の対立が目立っている。欧州委は、7月2日に2040年目標の法制化案を発表する予定で、その内容に注目が集まっている。

このほか、7月9日に相互関税の適用停止(2025年4月10日記事参照)の期限を迎える米国関税についても、交渉の具体的な進展は明らかにされず、欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が「われわれは合意の用意がある」とする従来のメッセージを述べるにとどまった。

(吉沼啓介)

(EU、スロバキア、ハンガリー、米国、ロシア)

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