マレーシア中銀、政策金利2.75%に、5年ぶり引き下げ

(マレーシア)

クアラルンプール発

2025年07月11日

マレーシア中央銀行は7月9日の金融政策会合(MPC)で、政策金利を0.25ポイント引き下げ2.75%とすることを決定した(中央銀行プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。金利の引き下げは、新型コロナ禍の2020年7月以来、5年ぶり。これまで10会合連続で3%に据え置いていた政策スタンスから転換した。緩やかなインフレ見通しのもとで、持続的な成長を維持するための予防的措置として、金融緩和が適切と判断した。

ロイターが6月30日~7月7日に実施した事前調査では、31人のエコノミストのうち17人が利下げを予測していた。第1四半期のGDP成長率の減速(2025年5月26日記事参照)、6月のインフレ率が4年ぶりの低水準だったこと、中銀が5月の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで下振れリスクを強調していたことなどがその理由。一方、一部のエコノミストは、7月1日に実施した売上サービス税(SST)引き上げ(2025年6月12日記事参照)の影響を見極めるため、利下げは9月以降に持ち越されるとの可能性も指摘していた。次回MPCは9月4日に開催される。

中銀は、マレーシア経済については楽観的な見通しを示した。足元で堅調な内需と輸出により経済活動の拡大が続いていることから、今後も雇用や賃金の伸び、ならびに所得支援策が家計消費を支える上、複数年にわたる民間・公共部門のプロジェクトが投資活動を後押しすると分析。一方で、世界貿易の減速、センチメント(市場心理)の悪化、一次産品の生産低迷などが下振れリスクになる可能性も指摘した。また世界経済については、消費支出の持続と一部の駆け込み需要により拡大基調にあるとしつつも、関税政策の不透明さや地政学的緊張が、金融市場や商品価格の変動に波及する恐れがあると説明した。

2025年1~5月の総合インフレ率は平均1.4%、コアインフレ率は1.9%だった。通年のインフレ率についても、世界的なコスト圧力の抑制と国内需要安定により、緩やかな水準にとどまると予測した。

総じて、国内経済は堅調な基盤を維持しているものの、外部環境の不確実性が成長見通しに影響を与える可能性を指摘した。これを受け中銀は、今後の金融政策につき、国内経済の成長とインフレ見通しのバランスを重視しつつ、慎重に対応する方針を示した。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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