外貨準備高の積み増しに苦戦、IMFのレビューに遅れ

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2025年07月24日

アルゼンチンに対するIMFによる拡大信用供与措置(EFF)を通じた新たな支援(2025年4月16日記事参照)が開始されてから約3カ月が経過した。当初の計画では、政府がIMFと合意したパフォーマンス目標に対する初回レビューが6月に終了した後、約20億ドルの追加の融資金が払い込まれる予定だった。しかし、7月21日現在、初回レビューはいまだ完了しておらず、追加の融資金も払い込まれていない状況だ(添付資料表参照)。

7月18日付の現地紙「ラ・ナシオン」(電子版)などの報道によると、パフォーマンス目標のうち、外貨準備高の純増が未達のため、レビューの完了が遅れているという。IMFが2025年4月11日に公表したアルゼンチンへのEFF支援に関するスタッフレポートによると、3月末日時点にマイナス49億ドルだった中央銀行の外貨準備高(ネット)を6月13日にマイナス5億ドルまで増やす、すなわち44億ドル積み増す目標が設定されている。

政府はIMFから120億ドルの新たな融資金の払い込みを受け、4月14日には為替制度をバンド制に移行すると同時に、資本取引規制を緩和したが、その後、外貨準備高の積み増しに苦心している。

経済省は2030年5月30日を満期とするドルで購入可能なペソ建て国債のBONTE債を発行し、10億ドルを国際金融市場から調達することに成功した。6月9日には中央銀行が外貨準備高増強のための追加的なプログラムを発表し、2025年の国債入札スケジュールでペソ建て国債へのドルによる直接申込み方式を導入するほか、国際商業銀行とのレポ取引(外貨を一時的に調達する目的で債権を売買または賃借する取引)を通じて、ドル建て中銀債「BOPREALシリーズ1-D」(注)を担保に20億ドルを調達した。

前述の報道によると、外貨準備高の純増の向けた政府の努力や、2025年10月に国会議員中間選挙が実施されることを考慮し、IMFは7月31日に理事会による初回レビューの承認を目指すことを受け入れたようだ。インフレ抑制には一定の成果を出している政府だが、今後は外貨準備高の積み増しで一層の成果が求められる。

(注)2025年7月16日に発表されたBOPREALシリーズ4の入札については、2025年7月22日記事参照。BOPREAL1-Dなどのサブシリーズを含む各シリーズの特徴については、2024年2月8日記事の添付資料を参照。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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