ドイツ経済諮問委、2025年をゼロ成長と予測、特別基金活用に期待も、官僚主義と構造転換が課題
(ドイツ)
ベルリン発
2025年06月03日
ドイツ政府の経済諮問委員会(通称「五賢人委員会」)は5月21日、年次報告書を発表した(ドイツ語、英語
)。2025年の実質GDP成長率が0.0%、2026年は1.0%と予測し、2025年の予測は前回2024年11月より0.4ポイント下方修正した(2024年11月20日記事参照)。
報告書は全体として「投資志向の財政運営」「官僚主義の低減」「構造転換への柔軟な対応」の3点を柱に、ドイツ経済再活性化への道筋を示した。
冒頭でドイツ経済を巡る状況として、3年連続の経済停滞、米国の関税政策が世界経済成長への脅威となっていることや、米国の安全保障政策の転換による欧州とウクライナの安全保障の弱体化などを列挙するとともに、対応策としてドイツで特別基金を議会で可決し、防衛、インフラ投資、気候保護に運用できる資金調達の枠組みが整備されたことを語っている(2025年3月24日記事参照)。
2025年は輸出の縮小や、民間消費の低迷、企業の設備投資の縮小、建設投資の緩やかな好転があると予測した。2026年に入ると、特別基金の効果が市場経済に波及し、経済成長はプラスに転じるとしつつも、特別基金の使用が消費的支出に偏れば、債務増加のリスクが高まることを警告した。そのため、特別基金から支出された資金を持続的な成長効果を生み出すような投資に活用することや、基幹予算からの支出の付け替えを防ぐための拘束力あるルールの策定などを提言している。
また、経済成長の阻害要因として、過剰な官僚主義(行政手続き)を挙げ、企業の市場参入や投資に関する意思決定をゆがめるとともに、連邦政府が課す手続きに起因するコストだけでも年間約650億ユーロに達し、ドイツの総労働時間の少なくとも1.7%を拘束していると試算して、コスト増大の原因にもなっていることを指摘し、これまで個別の対策が講じられてはいるものの、目に見える効果は出ておらず、全体的な改革の必要性があるとした。
さらに、国内の産業構造の変化が地政学的要因による国際貿易の変化や、ウクライナ情勢の影響で上昇したエネルギーコスト、脱炭素化、デジタル化、人口動態の変化といった要因によって加速していると指摘している。政府は既存の構造維持のためではなく、成長のダイナミズムの阻害要因に対して措置を講じるべきとし、職業教育やリスキリングに焦点を当てた労働市場政策によって支援されるべきと提言した。
(打越花子)
(ドイツ)
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