5月のカナダ消費者物価指数、上昇率は前年同月比で横ばい
(カナダ)
トロント発
2025年07月04日
カナダ統計局が6月24日に発表した2025年5月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比1.7%上昇で4月の上昇率(1.7%、2025年5月22日記事参照)から横ばいとなった(添付資料表参照)。
統計局は、上昇率の鈍化要因として、家賃(前年同月比4.5%増、4月5.2%増)の上昇幅の縮小や、旅行ツアー(同0.2%減、4月6.7%増)の減少を挙げた。一方で、天然ガス(同13.6%減、4月14.1%減)と携帯電話サービス(同5.5%減、4月10.8%減)の下落幅が縮小したことにより、前月比では上昇圧力がかかったと分析。エネルギーを除いたCPIは、4月(同2.9%増)に続き、5月は2.7%の上昇となった。
新車は、電気自動車(EV)の一部モデルの価格上昇を背景に、4月に前年同月比4.6%増、5月に4.9%増と、上昇傾向にあると報告した。
ガソリンは前年同月比で15.5%下落し、4月の18.1%減に続いてエネルギー価格の下落を牽引した。2024年同月の水準を下回った主要因として、消費者炭素税の廃止(注)を挙げた。ガソリンは、前月比では1.9%の上昇となったが、これは夏季用燃料への切り替えに伴うコスト増加により、精製マージンを押し上げたことが主な要因とした。
発表を受けて、モントリオール銀行(BMO)のチーフエコノミスト兼マネージング・ディレクターのダグラス・ポーター氏は、米国の関税がカナダ経済に本格的な影響を及ぼし始めている兆候として、2025年5月の製造業売上高速報値が前月比で1.3%減少したことを挙げ、「今後のデータが最終的な結果を左右するが、CPIが一定の水準を維持している状況から、7月の利下げの可能性は現時点では低い」と述べた(BMOエコノファクト6月24日)。
一方で、トロント・ドミニオン銀行の調査部門TDエコノミクスのディレクター兼シニアエコノミストのアンドリュー・ヘンシック氏は、労働市場の軟調さや内需の低迷がインフレ圧力を抑えると予測しており、経済環境の弱さを踏まえると、カナダ銀行には2025年内にさらに2回の利下げを実施する余地がある、との見方を示した(TDエコノミクス6月24日)。
(注)連邦温暖化ガス汚染価格制度(GGPPA、Greenhouse Gas Pollution Pricing Act)は連邦OBPS制度(Output-Based Pricing System)と連邦炭素税制度(Fuel Charge)で構成される。連邦炭素税制度(Fuel Charge)は、最終消費者を対象に温室効果ガス(GHG)排出に直接かかわる化石燃料(ガソリンや軽油)に対する課税で、全ての条件を満たした納税者に対し、個人向けカナダ炭素税還付(CCR)が適用される(2023年9月27日付地域・分析レポート参照)。
(井口まゆ子)
(カナダ)
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