ブラジル産業界、EFTAメルコスールFTAの最終合意を歓迎

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)

調査部米州課

2025年07月23日

ブラジル政府は7月2日、欧州自由貿易連合(EFTA)・メルコスール間の自由貿易協定(FTA)交渉が最終合意したと発表した(7月2日付けブラジル大統領府)(注1、2025年7月22日記事参照)。7月2日から3日にかけて、アルゼンチンの首都ブエノスアイレス市で開催された第66回メルコスール首脳会議で発表した(7月2日付メルコスール事務局)。

ブラジルのジェラウド・アルキミン副大統領兼開発商工サービス相は「新たな協定の締結は、対話と多国間主義の尊重を意味する。相互投資と貿易の活性化によってわれわれは大きく成長することができる」と述べた(7月3日付ブラジル大統領府)。ブラジル大統領府によれば、当該FTAが発効することで人口約3億、GDP4兆3,000億ドルを超える経済圏が誕生する。

7月3日付現地紙「g1」および7月2日付「CNNブラジル」は、EFTA地域は1人当たりGDPが世界で最も高い地域の1つであることを挙げ、購買力の高いEFTA諸国とのFTAが発効することにより、肉類(牛肉、豚肉、鶏肉)を含むブラジル農産品の輸出が拡大する、と報じている。EFTAが公表しているファクトシートによれば、メルコスール諸国から輸出される「コーヒーおよびマテ、牛肉、鶏肉および豚肉、エタノールおよびバイオエタノール、赤ワイン、保存食などの調理済み食品」の関税は、一部関税割当の設定が行われるが、原則として撤廃される(注2)。

ブラジルの全国工業連盟(CNI)のリカルド・アルバン会長は「ブラジルの生産部門に大きなチャンスをもたらし、ブラジルの産業のプレゼンス拡大に寄与する」と述べ、当該FTAの最終合意を歓迎した(7月2日付「ポルタル・ダ・インダストリア」)。サンパウロ州工業連盟(FIESP)も歓迎する声明を発表し、物品貿易の拡大や投資促進のみならず、ブラジル企業のEFTA諸国の政府調達へのアクセス拡大に期待をよせた。なお、ブラジルの政府調達から保健分野が除外されたことに触れ、当該FTAが、各国の国内法を尊重していることも強調した。ブラジル大統領府は、保健分野が政府調達から除外されたことで、ブラジルの公的医療保険である統一保健医療システム(SUS)が守られ、国民は引き続き無償で医療を受けられる、と強調している(注3)。

メルコスールは、2024年12月に対EU・FTAでも最終合意しており、2025年内の署名を目指している。2023年12月には、対シンガポールFTAに署名した(注4)。ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は、台頭する保護主義を批判し、多国間主義の重要性を主張する。2025年4月にはアジア諸国とのFTA網拡大にも言及している(注5)。

(注1)EFTAの加盟国はスイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン。

(注2)2024年12月に最終合意したEUメルコスールFTAでも、鶏肉や豚肉などで関税割当が導入された。詳細は、2024年12月19日記事参照

(注3)EUメルコスールFTAでも、ブラジルの政府調達から保健分野が除外されている。SUSの維持に加えて、2024年1月に発表された「新ブラジル産業プログラム」の中で、薬品や医療機器など国産医療品のシェアを42%から70%に引き上げる目標が含まれていることも背景にあるとみられる。

(注4)現時点で未発効。

(注5)詳細は、2025年4月21日記事参照

(辻本希世)

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)

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