米財務省、フェンタニル取引に関与のメキシコ金融機関に制裁、フェンタニル対策法で初

(米国、メキシコ)

ニューヨーク発

2025年07月01日

米国財務省は6月25日、メキシコの3つの金融機関(CIバンコ、インターカム、ベクター)が違法な麻薬性鎮痛剤(オピオイド)取引に関連する資金洗浄を行っているとして、これら金融機関が関係する特定の資金送金を禁止すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、30日に官報で公示した。フェンタニル制裁法(Fentanyl Sanctions Act)とフェンタニル対策法(FEND Off Fentanyl Act)に基づく初めての措置となった。

米国ではオピオイドの一種の合成麻薬フェンタニルのまん延が社会問題となっており、2019年12月にオピオイドの不正取引に関与する外国人への制裁などを規定するフェンタニル制裁法を制定し、2024年4月には財務長官が違法なオピオイド取引に関連する資金洗浄を行う事業体を指定できるフェンタニル対策法を制定した。

今回、制裁対象となったのは、商業銀行のCIバンコとインターカム、証券会社のベクターだ。財務省の発表によると、この3金融機関は、メキシコを拠点とするカルテルに代わり、数千万ドルの資金洗浄を長期的に行い、フェンタニル製造に必要な前駆化学物質の調達のための支払いを仲介してきた。官報公示の21日後から、この3つの金融機関が管理する口座への送金や、仮想通貨への換金などが禁止される。

今回の発表に際し、財務省のスコット・ベッセント長官は「CIバンコ、インターカム、ベクターなどの金融仲介業者は、カルテルに代わって資金を移動することで、無数の米国人を中毒にし、フェンタニル供給網で重要な歯車を担っている。この強力な権限の初めての行使を通じて、フェンタニルやそのほかの麻薬を密売する犯罪組織やテロ組織がもたらす脅威に対抗するため、財務省があらゆる手段を駆使して取り組むことをあらためて示すものだ」と述べた。

ドナルド・トランプ大統領はメキシコとカナダ、中国に対して、米国へのフェンタニル流入防止に向けた適切な措置を講じるよう、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく追加関税を課している(2025年3月4日記事2025年3月4日記事参照、注)。なお、財務省は今回の制裁措置について、米国とメキシコ政府の協力によって行われたと述べている。

(注)IEEPAに基づく追加関税措置は、合憲性が審理されている(2025年6月12日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国、メキシコ)

ビジネス短信 1d83a644517c5e23