タイ憲法裁判所、ペートンタン首相に一時職務停止命令
(タイ)
バンコク発
2025年07月02日
タイ憲法裁判所は7月1日、ペートンタン・チナワット首相に対して職務停止を命令した。ペートンタン氏は、裁判所の命令に沿いつつも、反論を行う意向を表明している。
ペートンタン氏とカンボジアのフン・セン上院議長(元首相)との国境紛争に関する電話会談をめぐり、憲法・倫理規定への違反があったとして、上院議員36人がモンコン・スラサッチャ上院議長を通じて憲法裁判所に提訴した。タイ国内では、同首相の辞任を求めるデモや連立与党の一部離党の動きがみられていた(2025年6月27日記事参照)。
憲法裁判所は満場一致で上院議長の訴えを受理した。審議の結果、多数決(7対2)で訴えを支持する合理的な根拠があると判断した。ペートンタン氏に対して、憲法裁判所が最終決定を行うまでの間、首相の職務を即日停止するよう命令した。「ターン・セータキット」紙(7月1日付)によると、ペートンタン氏の職務停止中は、スリヤ・ジュンルンルアンキット副首相兼運輸相が首相を代行する。
憲法裁判所によると、ペートンタン氏は今後、15日以内に反論を提出する必要がある。ペートンタン氏は、命令発表後に記者会見を開き、「自らの対応を快く思わない人もいるかもしれない」と反省の意を述べつつ、対応は誠実な取り組みだったことを証明する意向を示している(7月1日付「ネーション」紙)。英国系コンサルティング会社VEROによると、憲法裁判所が判決を下すまでには通常1~3カ月を要するとみられる。
ペートンタン氏、内閣改造で政権にはとどまる
なお、ペートンタン氏は、憲法裁判所の命令前日の6月30日に発表(注)した内閣改造を通じて、首相と文化相を兼務することから、7月3日の国王宣誓式に文化相として参加できる。内閣改造では、副首相兼内務相にプームタム・ウェーチャヤチャイ氏(旧:副首相兼国防相)が就き、商務相はピチャイ・ナリプタパン氏からチャトゥポーン・ブルットパット氏に交代している(添付資料表参照)。米国政府との関税交渉を主導するピチャイ・チュンハバジラ副首相兼財務相は留任となった(2025年5月16日記事参照)。
(注)官報掲載が6月30日付、公表されたのは7月1日付となっている。
(藪恭兵、ピンラウィー・シリサップ)
(タイ)
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