首相辞任を求めるデモが始動、連立与党にも亀裂
(タイ)
バンコク発
2025年06月27日
タイのペートンタン・チナワット首相の辞任を要求する反政府抗議デモが6月28日、首都バンコク市内の戦勝記念塔の周辺で開始される予定になっている(6月22日付「バンコク・ポスト」紙)。カンボジアとの国境紛争(2025年6月24日記事参照)に関する首相の対応への抗議で、議会でも首相の責任を問うかたちで、連立与党からの離脱や辞任を求める声が高まっている。
抗議デモは、ジャトゥポン・プロムパン氏ら著名な抗議指導者が計画を発表した。ジャトゥポン氏は、デモはタイの主権維持を目的としていると述べている。バンコク首都警察は、28日に戦勝記念塔での車両の通行を避けるなど、警戒するよう市民に警告している(6月26日付「ネーション」紙)。
タイ議会下院では、ペートンタン政権の主要な連立与党であるタイ誇り党が6月18日、連立与党から離脱する声明をSNSで発表。同党は離脱声明において、カンボジアのフン・セン元首相とペートンタン首相の、国境紛争に関する電話会談の内容がタイ国民に知れわたったことで、タイの主権や領土、国益などに影響が及んだことに言及。ペートンタン首相に責任を取るよう求めた。
ペートンタン首相は6月22日、連立与党の会合を開催し、自らの辞任や国会解散の可能性を否定し、政権を維持する姿勢を明確にした。他方、報道によれば、同会合に参加したピーランパン・サーリーラッタウィパーク副首相兼エネルギー相が所属するタイ統一党(UTN)でも、首相の辞任や連立からの離脱を求める声が上がっている(6月22日付「バンコク・ポスト」紙)。
現地政治情勢に詳しい英国系コンサルティング会社VEROは、今後のペートンタン政権のシナリオとして、連立与党の再編や首相辞任、総選挙の実施などを提示している(6月19日時点)。いずれの場合でも、経済面での政府・インフラ支出や重要法案・人事(娯楽複合施設、タイ中央銀行総裁選任など)などの決定・実施が停滞する懸念が示されている。
(藪恭兵、ピンラウィー・シリサップ)
(タイ)
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