カザフスタン初の原子力発電所、ロシア企業が建設へ
(カザフスタン、ロシア)
調査部欧州課
2025年06月19日
カザフスタン原子力庁は6月14日、同国初となる原子力発電所を建設する国際コンソーシアムの代表事業者にロシアのロスアトムを選定したと発表した。タス通信(6月16日)によると、原子力庁は原発の完工が2035~2036年になると見込んでいる。今後、ロスアトムと協力して国際コンソーシアムの組成を行う。組成に向け、選定から漏れた他の候補企業とも協力に関して対話を行う考えだ。
原子力庁はロスアトムの選定について、「技術・経済両面からの総合的な評価に基づいた。選択は政治的なものではなく、カザフスタンのエネルギー安全保障と発展の利益を反映したものだ」とコメントした(「タス通信」6月16日)。同庁のアルマサダム・サトカリエフ長官は、原発は完成次第、カザフスタンが単独の所有者になることを強調した(「カズインフォルム」6月14日)。
原子力庁はこれまで、世界の主要な原子炉技術サプライヤーと交渉を行い、候補企業としてロスアトム、中国核工業集団(CNNC)、フランス電力(EDF)、韓国水力原子力(KHNP)の4社を候補企業として選んだ。各社からの建設に関する提案書に基づき、フランスのエンジニアリング会社であるアシステムの協力の下、総合的な評価を行った。評価の結果を踏まえ、原子力産業発展に関する省庁間委員会がロスアトムを選定した。次点としてCNNC、3位に同列でEDFとKHNPが選ばれた。
サトカリエフ長官は同14日、中国CNCCがもう1つの原発建設に関する国際コンソーシアム代表企業になると発言した。「核燃料サイクル全体を自力で行える国は世界で多くない。中国は必要な技術と産業基盤を持つ国の1つで、われわれの次の最優先事項は中国との協力だ」と述べ、中国側と交渉を行う意向を表明した。
カザフスタンでは、ソ連時代からの1973~1999年にカスピ海沿岸の現アクタウ市で原発が稼働していた。同国のカシムジョマルト・トカエフ大統領は、経済発展に伴う電力不足問題の解決と脱炭素推進のため、原発導入に積極的な姿勢を取り、2024年10月の原発建設の是非を問う国民投票で7割の支持を獲得した(2024年10月10日記事参照)。2025年2月に同国初となる原発の建設予定地としてアルマトイ州ジャンビル地区を決定、3月に原子力庁を設立して建設企業の選定作業を進めていた。トカエフ大統領は、3カ所の原子力発電所を建設する必要があるという見解も表明していた(2025年3月27日記事参照)。
(浅元薫哉)
(カザフスタン、ロシア)
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