カザフスタンで原発建設の是非問う国民投票、賛成が7割

(カザフスタン)

調査部欧州課

2024年10月10日

カザフスタンで10月6日、原子力発電所建設の是非を問う国民投票が実施された。同国選挙管理委員会が8日に発表した暫定結果によると、有権者の63.66%に当たる782万204人が投票し、賛成が71.12%を占めた。この結果を受け、同国政府が計画する原発建設が実現に向けて前進することになる。

同国のカシムジョマルト・トカエフ大統領は、経済発展に伴う電力不足問題の解決と脱炭素推進のため、原子力発電導入に積極的な態度を取っている。同大統領は2023年9月1日の国民に向けた演説で「カザフスタンは世界最大のウラン生産国として、独自の原子力発電所を持つべきだ」と述べ、歴史的経緯(注)から核の安全性に懸念を抱く国民が多いことに理解を示しつつ、この問題について包括的かつ広範な議論を行う必要があると呼びかけた。その後、2024年6月に国民投票を秋に実施すると発表し、8月には全国で公聴会を開くなどして議論の場を設けてきた。

新しい原子力発電所の建設予定地として、アルマトイ州のバルハシ湖畔にあるウルケン村が既に選定されている(2022年6月16日記事参照)。しかし、同湖の浅瀬化が進んでおり、原発建設による枯渇の恐れがあることや、事故が起きると人口密集地域のかなりの部分が放射能汚染にさらされる危険性があることを懸念する声がある。

建設参加予定企業として、ロシアのロスアトム、韓国水力原子力(KHNP)、フランス電力(EDF)、中国核工業集団(CNNC)の4つが候補として挙がっている。これについて、トカエフ大統領は国民投票後の記者会見で、私見としながら、最先端の技術を持つ世界的企業で構成される国際コンソーシアムが建設に当たるのが望ましいと述べた。

ロマン・スクリャル第1副首相は8日の記者会見で、企業と締結する原発建設の契約には、西側諸国の制裁が建設に影響を及ぼすリスクを避けるための「制裁条項」を設ける方針を示した。2025年には建設や設計の請負企業がいつ決まるか明らかになるとの見通しを述べた(タス通信10月8日)。

(注)カザフスタンでは、ソ連時代にセミパラチンスク核実験場で約450回の核実験が行われ、約150万人が健康被害を受けたとされる。原子力発電所は、ソ連時代の1973~1999年にカスピ海沿岸の現アクタウ市で稼働していた。

(小林圭子)

(カザフスタン)

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