中国商務部、ロボット・新エネ車など民生用途のレアアース輸出管理に関して言及
(中国、米国、EU)
調査部中国北アジア課
2025年06月09日
中国商務部は6月7日、4月4日から実施している中・重希土類関連品目に対する輸出管理(注1)について、報道官談話を発表した。
談話では、レアアース関連品目は軍民両用の属性を有するものであり、これに対して輸出管理を行うことは国際的に一般的な行いであること、中国によるレアアース関連品目に対する輸出管理は国家の安全と利益の維持、拡散防止などの国際義務の履行を目的とするものであることをあらためて説明した。
その上で、ロボットや新エネルギー車などの産業の発展に伴い、各国の中・重希土類の民生用分野における需要が高まっていることについては中国側としても留意しており、責任ある大国として、こうした各国・地域の民生用分野における合理的な需要や関心を十分に考慮し、法律法規に基づいて関連品目の輸出許可申請に対する審査を行い、すでに法に則して一定数の適法な申請を許可したと明らかにし、今後も適法な申請に対する審査・許可手続きを強化していくと表明した。このほか、本件については関連国・地域との輸出管理対話(注2)をいっそう強化し、適法な貿易について円滑化を促進していきたいと述べた。
欧州企業の申請に審査加速の意向、ロンドンで開催の米中協議の行方にも注目
また、商務部は同じく6月7日、王文涛商務部長が6月3日にフランスで欧州委員会のマレシュ・シェフチョビチ欧州委員(貿易・経済安全保障担当)と会談した際、欧州側に中国のレアアースなどの品目に対する輸出管理政策について説明するとともに、欧州の懸念を非常に重視し、条件を満たす申請については「緑色通道(ファストトラック)」を設けて審査を加速させる意向を表明し、実務者に対して本件に関する協議を速やかに行うよう指示したこと、同時に欧州側に対してハイテク製品の対中貿易を円滑化、保障、促進する有効な措置を取るよう求めたことも明らかにした(注3)。
なお、中国国営新華社の報道によると、中国外交部報道官は6月7日、何立峰副首相(中国共産党中央政治局委員)が6月8日から13日にかけて英国を訪問し、米国側と米中経済貿易協議メカニズムの第1回協議を行うと明らかにした。先般、スイスのジュネーブで行われた米中協議とその後の共同声明を巡っては、米中の履行義務に関して両国間で見解の相違もみられており、今回の協議の行方が注目される(注4)。
(注1)中国は4月4日、一部の中・重希土類関連品目(サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの7種の中・重希土類レアアースの金属、合金、関連製品、酸化物とその混合物、化合物とその混合物)に対する輸出管理の実施を公告し、即日実施した(2025年4月7日記事参照)。これまで、特に自動車業界などを中心にその影響を訴える声が出ている(2025年6月5日記事参照)。
(注2)中国商務部は日本、韓国、オランダ、英国などと政府間の輸出管理対話や、政府と企業の交流活動を実施している。
(注3)在中国の欧州企業の団体である中国EU商会によれば、5月27日に商務部が開催した中国と欧州の半導体関連企業の座談会において、会員の欧州企業が懸念する輸出管理の問題について中国当局と交流した。また、同商会は6月6日に発表した中国のレアアース輸出管理に関する声明において、同措置によって影響を受ける欧州企業の意見として、上記の座談会以降に、中国側が欧州産業界からの情報提供に基づいて最も緊急性の高い案件を優先して審査したことで、欧州企業の輸出許可件数が増加するなど一定の進展がみられたものの、多くの企業にとって、重大なサプライチェーンの混乱を防ぐには依然十分ではないと指摘している。
(注4)中国は共同声明を受け、5月14日午後0時1分から、税委会公告2025年第4号で定めた米国商品に対する追加関税34%のうち24%の適用を90日間停止し、税委会公告2025年第5号と第6号による追加関税(計91%)は実施を停止した(税委会公告2025年第7号)。このほか、4月4日と9日に発表した「信頼できないエンティティー・リスト」への米国企業計17社の掲載と、「輸出管理コントロールリスト」への米国企業計28社の掲載をいずれも5月14日から90日間停止すると発表している(2025年5月15日記事参照)。一方、それ以外の措置の扱いについては不明確な状況となっている。中国商務部は6月2日、中国がジュネーブ経済貿易協議での合意に違反しているとの米国の主張に対し、中国は合意に基づき、米国の相互関税に対して実施した関税、非関税措置を取り消すか暫時停止しており、協議の合意を厳格に実行し、積極的に維持していると反論している(2025年6月3日記事参照)。6月5日夜に行われた習近平国家主席とトランプ大統領の電話会談においても、習主席は、中国は厳格に合意を実行しており、米国は実態に即して進展を捉え、中国に対して実施しているネガティブな措置を撤回すべきと主張した(2025年6月6日記事参照)。
(小宮昇平)
(中国、米国、EU)
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