欧州鉄鋼・アルミ部門、米国の追加関税率引き上げを憂慮、協調回復を訴える

(EU、米国)

ブリュッセル発

2025年06月09日

米国が6月4日から、鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税率を25%から50%に引き上げたことを受け(2025年6月4日記事参照)、欧州の鉄鋼・アルミ部門はEU域内企業の輸出減少や損失拡大に加え、追加関税の対象品目ではないアルミスクラップの輸出急増を憂慮している。

欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は6月4日、世界的な過剰生産の中、EUへ安価な鉄鋼製品の流入が増加し、需要低迷に苦しむEU域内企業への影響が拡大することに懸念を示した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委員会は現行の鉄鋼セーフガード措置が終了する2026年7月以降、より実効性の高い貿易措置を実施する方針だが(2025年3月28日記事参照)、EUROFERは直ちに新たな措置を導入すべきと主張した。さらに、米国の関税措置により、域内企業の米国向け輸出の大半は実質的な禁輸措置を受けていると指摘し、域内企業の輸出力維持と世界的な過剰生産への対応に関し、交渉による米国との解決を訴えた。

ヨーロピアン・アルミニウムは同日、米国向けの高付加価値製品の輸出減少に加え、EUからのアルミスクラップの流出拡大を懸念した(プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。ヨーロピアン・アルミニウムによると、追加関税の対象ではないアルミスクラップは、2025年第1四半期(1~3月)の米国向け輸出量が前年同期比で約3.7倍となった。これは2024年の輸出量全体の約3分の2に相当する。

今回の関税率の大幅な引き上げにより、アルミスクラップの輸出はさらに増加することが予測され、域内のリサイクル産業にさらに大きな打撃となり、EUの循環型経済の実現に向けた二次原材料の確保にも影響が出ると指摘した。欧州委も急激な輸出の増加に注目し、5月8日に発表した米国の相互関税措置への対抗策の対象品目案(2025年5月13日記事参照)にアルミ廃棄物とスクラップを含めた。ヨーロピアン・アルミニウムは、米国だけではなく、全ての輸出相手国を対象としたスクラップの輸出課徴金の即時導入が必要と主張した。

加えて、本来は米国向けだった製品がEU市場に流入し始めており、今後も半製品を中心に流入が拡大すると指摘し、域内企業の競争力低下を強く懸念した。不公正な競争への対応が目的であれば、EUと米国が協調し、非市場経済によって引き起こされる構造的不均衡に対処すべきと訴えた。

(滝澤祥子)

(EU、米国)

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