デジタル製品パスポート、第1弾パイロット展開プロジェクト報告会開催

(EU)

ブリュッセル発

2024年03月22日

EUのエコデザイン規則案(2023年12月11日記事参照)の一環として、新たに導入される「デジタル製品パスポート(DPP)」のパイロット(先行)展開を推進する協働イニシアチブ・サーパス(CIRPASS、注1)は3月5日、18カ月間のプロジェクト終了に伴う報告会を開催した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

欧州委員会の域内市場・産業・起業・中小企業総局の政策担当は、DPPの現状と今後の展望について報告。DPPはグリーン・デジタル戦略を推進する上で重要なツールで、7部局(注2)が策定に参画していると説明した。DPPの目的は、持続可能性、循環性、法令順守に関する製品固有の情報を電子的に提供することと述べた。設計上の特徴については、データ集積は分散型で相互運用可能にする必要性を強調。製品情報は、モデル別、バッチ別、製品単位別で検討中とした。また、税関と税関以外の領域の情報交換を可能としているEU税関単一窓口と接続することにより、税関当局がDPPに登録された情報の自動認証が可能になるとした。

このほか、スウェーデンの関係者が開発した、アプリやインターネットからアクセスするDPPシステムのデモ結果も紹介された。製品情報は製造事業者、製品認証情報はエコラベル機関からそれぞれ入手し、既存技術でシステムの運用が可能であることが実証された。消費者はアプリなどでDPPが定める義務要件と、製造事業者が任意で追加する情報に容易にアクセスでき、購買時の意思決定に役立てることができる。また、消費者が個別に所有する製品情報を領収書とともに保存できる機能もある。中古品として販売する際や修理の際に、必要な情報に容易にアクセスが可能となることで循環性が高まるとした。

今後は、欧州委が製品グループごとに委任法令で設定する具体的な要件に沿ったデータ収集、システム構築、認証方法の具体化が課題となる。報告会では2027年に予定されている本格稼働に向け、2024年5月にサーパスの第2弾が立ち上がることも発表された。

(注1)2022年10月、EUの「デジタル・ヨーロッパ・プログラム」の資金を得て創設。エコデザイン規則案の要件に沿い、「デジタル製品パスポート」の明確なコンセプトの定義、産業横断での製品データモデルの策定を行い、循環型経済への移行に貢献することを目的とする。31機関が参画。第1弾プロジェクトでは電子機器、バッテリー、繊維製品の3分野から取り組み開始。

(注2)通信ネットワーク・コンテンツ・技術総局、デジタルサービス総局、エネルギー総局、環境総局、域内市場・産業・起業・中小企業総局、共同研究センター、税制・関税同盟総局

(薮中愛子)

(EU)

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