中国の光通信メーカー、AI・EV分野に照準
(中国)
青島発
2025年06月18日
米国トランプ政権が発表した相互関税(2025年5月27日記事参照)の対象外品目に一部の光通信機器(注1)がある。日本企業と長年にわたりビジネスをしてきた光通信機器メーカーの青島北通実業(本社所在地:山東省青島市)の劉本一総経理に、これまでの取り組みや米国関税政策の影響、今後の事業計画について聞いた(6月11日)。
(問)貴社のこれまでの取り組み状況は。
(答)当社は1989年創業の熱管理製品を生産・開発しているメーカーだ。1992年から2004年まで、日本はじめ米国、カナダ、オランダ、ドイツ、オーストラリアに家電用放熱器を供給した。1996年からIT業界に進出し、レノボや清華同方、北大方正集団、米国デル、ハイアール、ハイセンス、中国中車集団とも取引関係がある。2004年からは光通信モジュールを主力商品として生産しており、現在の年間売上高は約5億元(約100億円、1元=約20円)、従業員数は420人。2025年下半期に6つ目の工場が完成すれば、従業員を200~300人増員する予定だ。
(問)米国トランプ政権の関税政策の影響は。
(答)影響は限定的だ。光通信機器や同部品の一部は、米国の相互関税対象外となっている。これらの製品はほぼ中国で生産されており、米国も中国製品を使わざるを得ない状況だ。仮にトランプ政権が相互関税をかければ、テスラ、メタ(旧フェイスブック)、アマゾンなど光通信の利用頻度が高い企業にも影響が及ぶだろう。
(問)今後の事業計画は。
(答)現在は光通信モジュールが主力だが、同分野はサプライチェーンがかなり成熟している。今後はAI(人工知能)、センサー、スマートホーム分野に力を入れる計画だ。特に3DVC熱交換器(注2)は、AI・EV(電気自動車)・スマート家電・脱炭素関連製品といった次世代産業の中核を支える冷却技術として注目されている。今後1~2年で製品化したい。2025年上半期に日本での展示会に参加し、日本の自動車メーカーと商談を行った。3DVC熱交換器はまだコスト面では課題があるが、EVは必ず熱交換器が必要であり、日本企業との協業に期待している。
青島北通実業の入口に立つ劉本一総経理(ジェトロ撮影)
(注1)米国は4月11日、米国関税分類番号(HTSコード)4~8桁ベースで相互関税の対象外となる品目を明確化する大統領覚書を発表している。同覚書によると、HTSコード8517.62.00(通信機器)、8541.51.00(半導体ベースの変換器)などに分類される製品は相互関税の対象外となっている(2025年4月14日記事参照)。
(注2)3Dべーパーチャンバー。平面方向だけでなく、立体方向にも熱を拡散できる。
(皆川幸夫)
(中国)
ビジネス短信 1e5f8c52b44a14f7