米中摩擦の中で浮かび上がる新たな経済地図、青島でセミナー

(中国)

青島発

2025年05月27日

ジェトロは523日、中国の青島日本人会・商工会と共催で、丸紅中国会社経済研究チーム長の鈴木貴元氏を講師に迎え、「米国関税政策の中国への影響」をテーマにセミナーを開催した。日系企業関係者など56人が参加し、トランプ政権下で再燃した米中摩擦の実態と、それが中国経済および日本企業に与える影響について、最新のデータとともに詳細な分析が示された。

鈴木氏はまず、20254月に米国が対中追加関税を最大145%まで引き上げたことに触れ、これにより中国の対米輸出(中国全体の輸出の約15%)は、4月単月で前年同月比約20%の減少が見られたと紹介した。特に、電子機器や機械などの企業内貿易が多くを占めるため、関税の影響は中国企業よりも米国企業側に大きく及ぶ構造にあると説明した。

また、軽工業品(玩具、衣料、プラスチック製品など)は、中国の対米輸出量の3割、金額ベースでは45%を占めている。米国にとって、中国に代わる供給先の確保は困難と説明するとともに、米国の小売業界が深刻な影響を受けている現状を紹介した。

一方で、中国は、ASEAN諸国や中東、ロシアなどとの経済連携を強化し、輸入先の多様化と国産化を進めている。特に、半導体や化学品、自動車分野では「脱米国依存」の動きが加速しており、日本やドイツ、ブラジルなどが新たな供給国として注目されているという。

日本企業にとっては、中国との経済関係をどう位置づけるかが重要な課題となっている。鈴木氏は、中国のGDPが日本の約4.5倍に達していることを踏まえ、たとえ成長率が45%であっても、絶対額としては依然として大きな市場だと強調した。少子化で生産力が低下する日本にとって、中国の安定的な供給力はサプライチェーンの安全保障上、極めて重要と述べた。

今後の日中関係の展望については、政治的な緊張が続く中でも、経済関係は現実に即した柔軟な対応が求められると強調した。

写真 鈴木貴元氏の講演の様子(ジェトロ撮影)

鈴木貴元氏の講演の様子(ジェトロ撮影)

(皆川幸夫)

(中国)

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