中国人民銀行、金利引き下げ含む10項目の金融支援策を発表
(中国)
北京発
2025年05月09日
中国の国務院新聞弁公室は5月7日、中国人民銀行(中央銀行)、国家金融監督管理総局、中国証券監督管理委員会による「市場・マインドの安定化の支援に向けた包括的金融政策」をテーマとする記者会見を開催した。
中国人民銀行の潘功勝行長(総裁に相当)は、2025年も経済の持続的回復を推進するため、良好な金融環境を構築してきたと説明した。また、4月以降は外部から比較的大きな打撃に直面しているにもかかわらず、国内金融システムは依然として安定し、金融市場は強靭(きょうじん)性を示していると評価した。その上で、4月25日の中央政治局会議(2025年4月28日記事参照)を受け、中国人民銀行はさらに適切なマクロコントロールを実施するため、10項目の包括的金融政策を打ち出したとして、その内容を紹介した(詳細は添付資料表参照)。
1点目から5点目では、預金準備率と各種金利の引き下げを示した。1点目では、5月15日から金融機関の預金準備率を0.5ポイント引き下げ(注1)、市場に約1兆元(約20兆円、1元=約20円)の長期流動性を供給するとした。2点目では、自動車金融会社・金融リース会社の預金準備率を現在の5%から0%に段階的に引き下げるとした。3点目では、5月8日から7日物リバースレポ金利を現在の1.5%から1.4%に引き下げるとした。この7日物リバースレポ金利の引き下げによって、最優遇貸出金利の指標のローンプライムレート(LPR)を約0.1ポイント引き下げる効果がある見通しとしている(注2)。5点目では、5月8日から個人住宅積立金(注3)ローン金利を0.25ポイント引き下げるとした。
6点目以降では、特定分野を対象とする金融支援措置を示した。具体的には、「両新政策」(注4)の推進を目的とする科学技術イノベーション、設備更新向けのリファイナンス極度額の増額や、サービス消費・養老関連産業振興に向けたリファイナンスファシリティーの新設などを示した。
潘行長は同会見で、世界経済は現在、不確実性に満ちており、経済の分断と貿易摩擦が激化し、世界のサプライチェーンは混乱し、国際金融市場の混乱が誘発され、世界の経済成長の勢いが弱まっていると指摘した。同氏が参加した、IMF・世界銀行総会(2025年4月30日記事参照、米国の首都ワシントンで4月21~26日に開催)では、各国中央銀行や国際金融機関のトップが強い懸念を示していたとも述べつつ、中国人民銀行は高水準の対外開放を揺るぎなく推し進め、国際金融ガバナンスと国際協力に積極的に参加し、ルールに基づく国際経済・金融秩序を守るとした。また、金融の開放と安全性のバランスを取り、中国の金融市場の円滑な運営を着実に行っていくと表明した(注5)。
(注1)既に預金準備率が5%となっている金融機関を除く。
(注2)LPRは中国人民銀行が毎月20日に金利更改の発表を行う。20日が非営業日の場合はその翌営業日に発表する。なお、直近のローンプライムレートは期間5年以上が3.60%、期間1年が3.10%となっている(2024年10月21日記事参照)。
(注3)主に住宅購入に使用される積立金で、社会保険と同様に、企業、従業員がそれぞれ拠出して積み立てる。住宅購入、リフォームなどの際に積立金口座から引き出して使用されるが、残高などに応じて住宅ローンの貸し付けを受けることもできる。
(注4)両新政策とは、「大規模設備の更新」「消費財の買い替え」を推進する政策(2025年1月16日記事参照)。
(注5)同会見ではメディアの質疑応答も行われた。国家金融監督管理総局の李雲澤局長は、米中貿易摩擦の影響を受ける中小・零細企業への具体的な支援策について、「金融救済措置の強化」「輸出の安定化措置」「国内販売の拡大支援」の3点を回答した(他の政府機関の支援策については2025年5月2日記事参照)。
(亀山達也)
(中国)
ビジネス短信 d30473e3f6854693