中国政府、米国関税の影響などを受け、輸出企業などに対する支援策を表明
(中国)
調査部中国北アジア課
2025年05月02日
中国の国家発展改革委員会、人力資源社会保障部、商務部、中国人民銀行(中央銀行)は4月28日、経済・雇用の安定化措置に関する記者会見を行った(注1)。会見では、米国の対中追加関税などを受けた中国企業への影響や支援策について言及があった。
人力資源社会保障部は、米国の度重なる高額な追加関税によって一部の輸出企業は生産経営上の困難に直面しており、一部の労働者の雇用に対する圧力が高まっていると指摘し、失業保険・労災保険の料率引き下げの継続実施のほか、雇用安定と拡大のための特別融資増額などを行ったとした。
人民銀行は、一時的な困難に陥っているものの競争力がある中小輸出企業に対して、金融機関が貸しはがしや融資打ち切りを行わないよう指導するほか、民営輸出企業に対する金融支援の強化を奨励するとした。
商務部と発展改革委員会は、4月22日に打ち出した輸出企業の国内販売拡大を支援する措置を紹介した。内容としては、経営困難に陥った企業に対する賃料、出展料、通信料の減免、貿易額や消費額が大きい10の省での輸出製品の国内販売キャンペーンの実施、自動車・家電・家具内装などの分野の輸出企業の買い替え補助金(注2)支援対象への追加、軽工業・アパレル・食品等の重点業界におけるマッチングの強化、業界団体やEC(電子商取引)プラットフォーマー、大規模小売業者による輸出品の国内販売支援などを挙げた(注3)。また、輸出先の多元化支援のため、展示会出展費用の減免や関係国の需給動向などの情報提供などを行うとした。輸出信用保険の範囲拡大、輸出企業向け為替リスクヘッジサービスの提供、越境ECによるブランド育成なども行うと表明した。大型設備輸出用の特別融資などを設ける、とも報じられた(「第一財経」4月28日)。
中国輸出企業1,100社、約半数が米国事業縮小、約4分の3が新興市場開拓の意向
関税などの措置の中国企業への影響については、中国国際貿易促進委員会(CCPIT)が同日、全国1,100社余りの輸出企業にアンケートを行った結果を紹介した。説明によると、50%近い企業が米国関連事業を縮小する予定と回答、75.3%の企業が対米輸出の減少を補うため、新興市場の開拓を計画しているとした。また、頻繁に変更される関税政策が不確実性を高めており、多くの企業が長期的な計画を立てることが困難と回答した。このほか、CCPITは貿易関連の情報を提供するウェブサイト「貿法通」(注4)において、中国による対米追加関税の適用除外や米国による対中追加関税への対応などに関する相談が増加傾向にあることも明らかにした。
(注1)今回記者会見を行ったのは、国家発展改革委員会の趙辰昕副主任、人力資源社会保障部の俞家棟副部長、商務部の盛秋平副部長、中国人民銀行の鄒瀾副行長。
(注2)中国政府は大規模設備の更新と消費財の買い替えを促進するため補助金政策を実施している(2025年の補助金の詳細は2025年1月16日記事参照)。商務部は、4月27日までに全国で自動車の買い替えが281万4,000台、対象家電の買い替えが4,941万6,000台、携帯電話などのデジタル製品の新規購入が3,785万5,000件、家具・キッチンなどの買い替えが4,090万6,000件あり、計7,200億元(約15兆1,200億円、1元=約21円)の消費を生み、1億2,000万人以上が補助金の恩恵を受けたと説明している。
(注3)各地の地方政府やEC・小売事業者の支援策などの取り組みについては2025年4月15日記事、4月22日記事、5月1日記事などを参照。
(注4)海外ビジネスに取り組む企業(主に中国企業)に向けて、各国・地域の法制度などに関する実務的な情報を発信するプラットフォーム。
(小宮昇平)
(中国)
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