ドイツ産業界、デジタル化を進める新設デジタル化・国家近代化省に高い期待
(ドイツ)
デュッセルドルフ発
2025年05月13日
ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(BITKOM)は5月5日、新設されるデジタル化・国家近代化省(2025年5月13日記事参照)への産業界の期待に関するアンケート結果を発表した(プレスリリース、ドイツ語)。
従業員20人以上の国内企業602社が回答しており、回答企業の95%が重要課題と挙げたのは「サイバーセキュリティー」「学校教育のデジタル化」「データ保護制度の見直し」だった。次いで「デジタル主権の強化(注)」(89%)、「企業のデジタル化」、「政府と行政のデジタル化」(各87%)、「医療システムのデジタル化」(86%)との回答が続いた。
また、99%の回答企業がデジタル分野でのドイツの国際競争力復活を新政権に期待しており、74%は新政権が経済を前進させられると信頼を寄せている。BITCOMの専門家は、人工知能(AI)や量子技術など鍵となるテクノロジーのみならずデジタルインフラ全体の向上に向けて今すぐ行動を起こせば、デジタル分野における主要国としての地位を獲得することができるとした。
5月6日に発足したメルツ新内閣(2025年5月8日記事参照)では、デジタル化・国家近代化省が新設された。ドイツ全体のデジタル化および近代化に向けて権限を一本化し、既存の省庁業務を統合することで包括的なデジタル戦略を推進することを目的とする。主な管轄としては、デジタルIDや市民アカウントの導入など行政のデジタル化・近代化を推進し、また各産業分野におけるデータ政策の整備、データ経済の促進、AI活用のための環境整備、ITセキュリティーの強化、高速インターネットの拡充に重点を置く。さらに、EU・G7・G20レベルでの国際デジタル政策の推進を通じて、ドイツおよび欧州のデジタル主権の確立を図るとしている。
同省大臣には、国際的な小売企業セコノミーとメディア・サターン・ホールディングの会長であるカーステン・ウィルトベルガー氏が任命された。この組閣人事は当初、驚きをもって受け止められたが、通信大手ボーダフォン、エネルギー大手のエーオン(E.ON)などの民間企業における豊富なビジネス経験からドイツのデジタル化推進の手腕に期待が高まっている、と報じられている(「ハンデルスブラット」紙4月28日)。
(注)デジタル主権とは、国家とその経済がデジタル領域における技術、プロセスやデータ管理などを独立して、安全かつ自国の利益に沿って意思決定できる能力を指す。
(マリナ・プタキドウ、櫻澤健吾)
(ドイツ)
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