ECLAC、中南米諸国の2025年経済成長見通しを下方修正
(中南米、ブラジル、メキシコ)
調査部米州課
2025年05月02日
国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)は4月29日、2025年の中南米諸国の経済成長見通しを下方修正したと発表した。ECLACによれば、ラテンアメリカ・カリブ地域の2025年の実質GDP成長率は、2024年12月時点での予測値2.4%から0.4ポイント低下し、2.0%とされている(添付資料表参照)。国別では、アルゼンチン(0.7ポイント増)、エクアドル(0.1ポイント増)、ペルー(0.4ポイント増)の3カ国を除いて、軒並み下方修正、または修正なし、となった。特に減少幅が大きかったのは、ベネズエラ(4.6ポイント減)、ハイチ(1.5ポイント減)、メキシコ(0.9ポイント減)など。
ECLACは、今回の下方修正の背景として、米国の追加関税が域内の輸出に与える直接的な影響を挙げている。さらには、その間接的な影響が国際金融市場のボラティリティーを高め、米国を含む主要な市場の株価や利率にまで及んでいる、とした。また、このような局面においては、単に投資を実行するのみならず、新たな技術の導入、イニシアチブやグッドプラクティスの普及、プロセスの改善といったかたちで、その「質」も重視すべきだ、とした。
ECLACに先んじて、IMFは4月22日に「世界経済見通し」を発表した。その中でブラジルは、今回のECLACと同じく、2025年のGDP成長率は2.0%とされているが(2025年4月25日記事参照)、メキシコの同成長率はマイナス0.3%で、より悲観的な予測となっている。これに対し、メキシコのクラウディア・シェインバウム大統領は、4月23日の記者会見で、大蔵公債省が試算した1.5~2.3%という2025年の成長率予測を引用し、不満をあらわにした(2025年4月25日記事参照)。同省の試算結果は、今回のECLACの発表内容(0.3%)と比べても、かなり楽観的なものとなっている。メキシコにとっては、今後の米国との追加関税を巡る交渉の中でも、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の重要性を訴え、米国市場へアクセスする上での優位性を確保したいという考えとみられる。
(佐藤竣平)
(中南米、ブラジル、メキシコ)
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