ブラジル経済は減速の予測も、米追加関税の影響は限定的

(ブラジル、米国)

調査部米州課

2025年04月25日

IMFは4月22日、最新の「世界経済見通し」を発表し、ブラジルの2025年の成長率(実質GDP伸び率)は2.0%と、2025年1月の前回予測から0.2ポイント下方修正した。この予測は、2月1日から4月4日までに米国が発表した追加関税(注1)と他国による対抗措置を含んでいる。

世界経済の成長率は2.8%と、0.5ポイント下方修正された(2025年4月24日記事参照)。

IMFのピエール・オリビエ・グランシャ主任エコノミストは「2025年と2026年は、全ての地域で景気後退が予測される」と述べ、米国のトランプ政権下で発動される追加関税措置などに起因する貿易摩擦が世界貿易に与える影響を強調した。

そうした中、追加関税措置などによるブラジル経済への影響は、他国への影響と比較すると、限定的だ(4月23日付現地紙「メルコプレス」、4月24日付現地紙「バロール・エコノミコ」)。ブラジルの主要金融機関の1つのイタウ銀行でチーフエコノミストを務めるマリオ・メスキータ氏は「ブラジルは米国のトランプ政権が課す世界共通関税(10%の追加関税措置)と鉄鋼・アルミニウム製品への25%の追加関税措置(注2)の対象になっているが、貿易摩擦による影響を大きく受ける国の1つではない」と述べた。その一方、「(貿易摩擦は)ブラジルの成長率に2025年は0.2ポイント、2026年は0.4ポイントの影響を及ぼす可能性がある」と強調した(4月24日付現地紙「バロール・エコノミコ」)。

IMFはまた、「世界経済見通し」でディスインフレ(物価上昇率の低下)の進展にも言及した。しかし、ブラジルについては、現状ではむしろインフレ懸念が強まっている。同国の2025年物価上昇率予測は5.3%と、前回予測の4.4%から上昇基調に転じた。ブラジル中央銀行の週次レポート(4月22日付)FOCUSによると、2025年のIPCA(拡大消費者物価指数、注3)予測は5.57%だ。これは中銀のインフレ目標値3%±1.5%(1.5~4.5%)に収まっておらず、インフレ再燃が危惧される。中でもトマト、コーヒー、卵をはじめとする飲食料品の価格が大きく上昇しており、これが特に低所得者層の家計消費に与える影響が懸念される(4月23日付現地紙「バロール・エコノミコ」、2025年4月16日記事参照)。

(注1)4月2日に米国が発表した国・地域別相互関税と、中国、メキシコ、カナダについては同時点までに発表されたそれぞれの国に対する追加関税、鉄鋼・アルミニウム製品、自動車・自動車部品に対しては品目別の25%の追加関税を反映。

(注2)ブラジル産アルミニウム製品へはこれまで、米国側で10%の追加関税が賦課されていたが、これが3月12日に25%に引き上げられた。鉄鋼製品については、2018年に米国がブラジルからの鉄鋼輸入に対して約350万トンを割り当て、その範囲内で追加関税を除外していたが、3月12日以降、国別例外措置が撤廃された。なお、ブラジルから米国への輸出は少ないが、自動車・自動車部品に対する232条追加関税の対象にもなっている。

(注3)ブラジルの代表的な物価指数。

(辻本希世)

(ブラジル、米国)

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