EU、会計指令の企業規模基準を改正、情報開示義務の対象企業も縮小

(EU)

ブリュッセル発

2024年02月06日

EU会計指令での企業規模の基準を改正する委任指令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが施行され、1月1日以降に開始される2024年会計年度から新基準が適用される。会計指令は、EU共通の会計枠組みを設定するもので、企業および親会社と子会社からなる企業グループを規模に応じて分類し、会計に関連する義務規定と免除規定などを定めている。

企業規模の基準は、欧州委員会が定期的に見直す規定となっているが、2013年に現行指令が施行されて以降、改正されたのは今回が初めて。欧州委は改正理由として、2021~2022年に域内でインフレが大幅に進んだことを挙げた。2013年から2023年3月末までのEU全体の累積インフレ率は27.2%に達したとして、委任指令は企業規模の各基準を約25%引き上げる。これに伴い、欧州委は約6%の企業が従来区分より小規模の企業分類に区分され、免除規定の適用を新たに受けることになると試算する。委任指令は、各加盟国による国内法化を経る必要があるが、2024年会計年度から原則適用される。ただし、加盟国は国内法で2023年会計年度にさかのぼって適用させることもできる。

会計指令の企業規模基準は、企業持続可能性報告指令(CSRD、2022年12月1日記事参照)やタクソノミー規則(2023年6月23日記事参照)で開示義務対象となる大企業・大企業グループや零細企業を除くEU域内の上場企業の基準にもなる。今回の改正により大企業・大企業グループは1万社以上が同開示義務の対象から外れる見込み。改正後の各基準は次のとおり。

〇零細企業:次の基準のうち少なくとも2つの基準が超えない場合

  • 総資産残高45万ユーロ(改正前35万ユーロ)
  • 純売上高90万ユーロ(改正前70万ユーロ)
  • 年間平均従業員数10人(改正なし)

〇小規模企業・グループ:次の基準のうち少なくとも2つの基準が超えない場合

  • 総資産残高500万ユーロ(改正前400万ユーロ)
  • 純売上高1,000万ユーロ(改正前800万ユーロ)
  • 年間平均従業員数50人(改正なし)

ただし、加盟国は国内法により、総資産残高の基準を750万ユーロまで、純売上高の基準を1,500万ユーロまで引き上げることができる。

〇中規模企業・グループ:次の基準のうち少なくとも2つの基準が超えない場合

  • 総資産残高2,500万ユーロ(改正前2,000万ユーロ)
  • 純売上高5,000万ユーロ(改正前4,000万ユーロ)
  • 年間平均従業員数250人(改正なし)

〇大企業・グループ:次の基準のうち少なくとも2つ以上の基準が超える場合

  • 総資産残高2,500万ユーロ(改正前2,000万ユーロ)
  • 純売上高5,000万ユーロ(改正前4,000万ユーロ)
  • 年間平均従業員数250人(改正なし)

(吉沼啓介)

(EU)

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