米国の相互関税、湖北省、湖南省では米国以外への販路開拓を目指す企業も
(中国)
武漢発
2025年05月01日
米国が発表した相互関税の導入について、中国中部地域の湖北省、湖南省の対外貿易企業にも影響が出ている。湖北省のベビー服製造販売企業の荊州英利服装は、製品の90%以上を欧州、北米に輸出している。同社の2024年の対外貿易総額は約1,000万元(約2億円、1元=約20円)、2025年2月から3月にかけて米国の顧客から3万枚の注文があった。通常、第1四半期(1~3月)は注文の多い時期だが、米国からの注文がキャンセルされる可能性に直面している。同社の祝繁栄総経理は「生産全体への影響はかなり大きく、発注の遅れも関税引き上げに起因するものだ」「その結果、当社の受注は急激に減少するだろう」と述べた。同社は関税戦争に対して、オーストラリアや欧州、「一帯一路」沿線の市場開拓を強化し、同時に国内のECプラットフォームと協力して国内販売を積極的に行うとしている。
湖北省の貿易企業の湖北福担威輸出入貿易は、2024年の輸出が約1億8,000万ドルで、このうち米国向けは約4,000万ドルで全体の約20%を占めた。輸出製品は主に自社工場で製造した繊維製品と越境貿易で調達した小型家電だった。同社の何方斌董事長は、2018年に米国が対中関税をかけた際、同社の受注は大きな影響を受けたが、同社が所在する荊州市の製品のコストパフォーマンスが良く、品質も良いため、その年の下半期には受注が急速に回復したと述べた。同氏は解決策を話し合うために顧客を訪問し、潜在的な顧客開拓も進めるとしている。
湖南省長沙市の県級市(注)瀏陽市の花火爆竹総会輸出分会の文光輝会長は、米国の関税引き上げは輸出に一定の影響があると述べた。2024年の瀏陽市の花火産業総生産額は500億元を超えた。このうち花火爆竹産業の輸出額は65億8,000万元で、米国市場向けが35%を占めた。現在、湖南省の花火輸出は多角化の傾向を示している。2025年1~2月の湖南省の花火輸出は、ASEAN向けが前年同期比19.7%増の1億元、EU向けが同21.7%増の9,701万元となった。
湖南省商務庁などは関係部門と共同で「2025年湖南省重点海外展示会目録」を発表し、企業が海外展示会に参加する際の出展料や物流費、人件費を支援している。支援対象となる展示会の数は181に増加し、アフリカで開催される全ての展示会が支援の対象となる。企業1社当たりの支援上限は30万元から100万元に引き上げられている。
(注)県級市は中国の行政区画の単位で、「県」と同じ区分にある市を指す。瀏陽市は長沙市の県級市となる。
(高橋大輔)
(中国)
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