2024年度農林水産物・食品相談実績、輸出実績と同様に米国が1位
(世界、日本)
農林水産食品部市場開拓課
2025年05月14日
ジェトロでは農林水産物・食品輸出相談窓口を設置し、農林水産物・食品の輸出を行う日本企業の相談を受け付けている。2024年度(2024年4月~2025年3月)は同窓口に1万件以上の相談が寄せられた。相談内容の半数以上が「日本からの輸出および輸出先国・地域の輸入に関する規制や手続き」に関するもので、次に多いのが「流通販売関連規制・規格」だった。
2024年度の農林水産物・食品の輸出に関する相談の対象国・地域の実績と、財務省貿易統計に基づく2024年の農林水産物・食品輸出額(農林水産省)を比較し、日本企業の輸出動向を分析した(添付資料図、表参照)。
相談対象国・地域でみると、日本からの輸出実績(金額ベース)が最も多い米国(1位、2,429億円)に関する相談が全体の2割を占め、最も多かった。米国食品安全強化法(FSMA)やバイオテロ法に関する米国食品医薬品局(FDA)食品施設登録などに関する相談が多かった。
輸出実績が第7位のタイ(628億円)が2番目に相談が多かった(全相談のうち7.8%)。これは、日本食レストランが増加して、日本産食品に対する関心が高まるなど、タイが有望な市場として輸出額が増加傾向にあり(注1)、タイの輸入規制に関して、法令などの改正が頻繁に行われて、規制や手続きがやや複雑な側面も影響し、相談が増加していると考えられる。
輸出実績が第3位の台湾(1,703億円)は、相談実績(全相談のうち7.1%)でも第3位と、一定の割合を占めた。タイ同様に、輸出額は増加傾向で(注2)、台湾の輸入規制や手続きに関する相談や原産地証明に関する相談が多かった。
2023年8月の福島第1原子力発電所のALPS処理水の処分に伴う水産物などの輸入規制(2023年8月24日記事参照)(2023年8月25日記事参照)の影響を受けて、中国と香港の輸出額は大きく減少した(中国:1,681億円、前年度比29.1%減、香港:2,210億円、同比6.6%減)。中国、香港(それぞれ、全相談のうち4.4%、3.7%)に関する相談も減少傾向にある。ALPS処理水の処分に伴う輸出などに関する相談は、規制が導入された2023年度と比較して落ち着きが見られる。
そのほか、輸出実績では上位10カ国に入っていないマレーシア、インドネシア、アラブ首長国連邦(UAE)、ブラジルなどに関する相談も増加傾向になっている。さらなる農水産物・食品の輸出拡大には、輸出先の多角化が不可欠で、これら地域は新規市場として今後の輸出拡大が期待できる。
(注1)農林水産省「2024年農林水産物・食品の輸出実績(国・地域別)」参照。2024年の輸出額は628億円で、前年比22.9%増。
(注2)農林水産省「2024年農林水産物・食品の輸出実績(国・地域別)」参照。2024年の輸出額は1,703億円で、前年比11.1%増。
(古城達也)
(世界、日本)
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