IMFによる新型コロナ対策に係る債務を完済

(ナイジェリア)

ラゴス発

2025年05月19日

ナイジェリアの現地報道によると、ムハメド・イドリス情報・ナショナルオリエンテーション相は5月12日、IMFからの34億ドルの債務について、2025年4月30日をもって全額返済したと発表した。元本債務を完済したが、今後もSDR(特別引出権、注1)に関連する手数料や利息として約3,000万ドルの支払いが見込まれており、同年5月、8月、11月の3回に分けて支払われる予定だ。

この融資は、ラピッド・ファイナンシング・インストルメント(RFI、注2)として、新型コロナウイルスの経済的影響の緩和を目的に2020年4月に供与された。パンデミックによる原油価格急落の影響を受け外貨準備高が減少したことから(2020年3月25日記事参照)、外貨準備高下落のさらなる抑制や経済縮小と財政圧力への対応に充てられた。ナイジェリア債務管理局(DMO)によると、2024年12月末時点の対外債務の総額は約457億8,000万ドルだった。内訳でみると、多国間債務は約223億1,600万ドル、2国間債務は約60億9,000万ドルで、商業債は約173億1,800万ドルのユーロ債が計上されている。

2025年4月11日には大手格付け会社のフィッチ・レーティングスがナイジェリアの格付けを「B-」から「B」に引き上げ、見通しを「安定的」とした。同社は格付けの引き上げについて、2023年6月以降の燃料補助金の撤廃(2023年6月2日記事参照)や、為替レートの自由化(2023年6月20日記事参照)、金融引き締めなどにより、政策の一貫性と信頼性が向上したためだとし、ダンゴテ製油所による国内精製能力の増強と原油生産の回復も評価した。一方で、2025年にはユーロ債11億ドルを含む52億ドルの対外債務の返済が予定されていることから、公共財政運営の厳しさも指摘した。

(注1)通貨ではないものの、その価値はドル、ユーロ、中国人民元、日本円、英国ポンドの5通貨のバスケットに基づいた国際準備資産。

(注2)ラピッド・ファイナンシング・インストルメント(RFI)は、深刻な経済危機や外的ショックに直面する加盟国に対し、迅速かつ柔軟な金融支援を提供するIMFの緊急融資制度のことを指す。通常の融資実行要件(コンディショナリティー)を必要とせず、返済期間は3年3カ月から5年の範囲で定められる。

(柴田北斗)

(ナイジェリア)

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