米国際貿易委、東南アジア4カ国製の太陽電池にAD・CVDの賦課を最終決定、7日以内に正式発令へ

(米国、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム)

ニューヨーク発

2025年05月21日

米国国際貿易委員会(USITC)は5月20日、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムの東南アジア4カ国製の太陽電池に対し、アンチダンピング関税(AD)および補助金相殺関税(CVD)を賦課する最終決定を下したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今後、商務省は通常7日以内にAD・CVDを賦課する命令を正式に発令する。

AD・CVDは、WTO協定で認められた貿易救済措置の一種だ。ADは、輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング輸出)が輸入国の国内産業に損害を与えている場合に、その価格差を相殺する目的で賦課される。CVDは、政府補助金を受けて生産などされた貨物の輸出が、輸入国の国内産業に損害を与えている場合に、当該補助金の効果を相殺する目的で賦課される。

USITCと商務省国際貿易局(ITA)は2024年4月以降に、これら4カ国製の太陽電池に対するAD・CVDの発動要否を判断する事実確認調査を開始していた(2024年5月22日記事参照、注1)。USITCの最終決定に先立って、ITAは2025年4月に、4カ国製の太陽電池に対するAD・CVDの税率を発表していた(2025年4月23日記事参照、注2)

今回のAD・CVDが最終的に賦課される場合、既存の関税に上乗せされることになる。4カ国の太陽光発電製品の米国への輸入に対しては、既に(1)1974年通商法201条(セーフガード)に基づく追加関税(2022年2月7日記事参照)、(2)4カ国を経由した迂回輸入防止のための中国製の太陽光発電製品に対するAD・CVD(2023年8月24日記事参照)、(3)国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づくベースライン関税(2025年4月10日記事参照)などが課されている。

米国の太陽電池〔米国関税分類番号(HTSコード)8541項〕の輸入額(2024年、国際収支ベース)は約226億ドルで、国別にはベトナム(約56億ドル)、タイ(約35億ドル)、マレーシア(約33億ドル)、インド(約16億ドル)、カンボジア(約13億ドル)の順に多く、東南アジア4カ国で全体の6割超を占める。

米国太陽光発電産業協会(SEIA)のアビゲイル・ホッパー会長兼最高経営責任者(CEO)は同日に声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、米国の太陽電池製造企業の調達価格の上昇につながる恐れがあるとして、「米国の太陽電池製造企業と、米国の太陽光発電産業全体にとって懸念すべき決定だ」と述べた。

(注1)USITCが米国の被った損害の有無を、ITAがダンピングや補助金の有無および税率を調査する。調査は、(1)USITCの仮決定、(2)ITAの仮決定、(3)ITAの最終決定、(4)USITCの最終決定の4段階で進められる。USITCの最終決定後、商務省は通常7日以内にAD・CVDを賦課する命令を正式に発令する。

(注2)4カ国製の太陽電池に対する一般的なADとCVDの税率は次のとおり。なお、4カ国の特定企業の製品に対しては、個別に税率が設定されている。

  • カンボジア:AD 125.37%、CVD 534.67%
  • マレーシア:AD 8.59%、CVD32.49%
  • タイ:AD 111.45%、CVD 263.74%
  • ベトナム:AD 271.28%、CVD 124.57%

(葛西泰介)

(米国、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム)

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