米連邦海事委、外国の船籍登録に関する状況調査開始

(米国)

ニューヨーク発

2025年05月28日

米国連邦海事委員会(FMC、注1)は5月21日、外国の船籍登録に関する法律、規則、慣行が米国の外国貿易での海上輸送条件に悪影響を及ぼすか否かの調査を開始すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、翌22日付の官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公示した。FMCは関連情報について、8月20日までパブリックコメントを募集する(注2)。

FMCは、一部の外国政府が自国に船籍を置く船舶に対するコンプライアンス要件を緩和することで、外国船舶誘致で競争優位性の獲得を図ろうとしており、「底辺への競争」の状態にあると問題視した。また、これらの外国で船籍登録された便宜置籍船(FOC)は海事関連の国際条約に完全には準拠せず、安全・環境・労働基準が低下する危険性があるほか、国際海運業界の枠組外で活動する「影の船団」として、密輸、制裁回避、禁止品目輸送などの違法・不法活動に従事する危険性も指摘した。FOCの危険性の事例として、2024年3月に米国メリーランド州ボルチモアで発生した船舶の衝突による橋崩壊事故(2024年6月13日記事参照)を挙げ、「船舶はマーシャル諸島で登録され、シンガポールを船籍としている。マーシャル諸島は最も多く使用される便宜置籍国の1つだ」と言及した。

FMCは調査開始の発表資料中で、船籍登録に関する外国の法律、規則、慣行が米国の外国貿易での海上輸送条件に悪影響を及ぼすような場合に、「包括的な調査を実施し、強力な執行措置を講じる権限を有している」と記載した。海運コンサルティング会社の最高経営責任者(CEO)のラーズ・ジェンセン氏は「悪影響を及ぼす状況が判明した場合に、どのような措置が講じられ得るか示されておらず、結果を待たなければならないが、これは当然ながら政治的な判断となる」と指摘している(英国港湾業界メディア「ポート・テクノロジー・インターナショナル」5月22日)。

なお、FMCは2025年3月にも外国船籍の船舶の運航状況に関連する調査を開始している。同調査開始の発表資料中では、パナマ船籍の船舶の隻数の多さを挙げつつ、将来的な米国港湾への入港拒否を含めた措置を講じる可能性も示唆していた(2025年3月19日記事参照)。

(注1)米国の国際海上輸送システムの規制権限を有する連邦政府の独立行政機関。

(注2)コメントは連邦政府ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから提出可能。案件番号はFMC-2025-0009。コメントのトピックの詳細は官報のⅣ項を参照。

(葛西泰介)

(米国)

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