米国土安全保障省、自主退去する不法移民に渡航支援と奨励金の提供を発表、リアルIDの完全運用が開始に

(米国)

ニューヨーク発

2025年05月08日

米国国土安全保障省(DHS)は5月5日、米国に不法滞在している移民が税関・国境警備局(CBP)のアプリを使用して自主的に母国に帰国する場合、帰国を円滑化するための渡航支援と1,000ドルの奨励金を提供すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

発表によると、不法滞在者の逮捕、投獄、送還には平均1万7,121ドルのコストがかかるため、奨励金を提供しても不法滞在者が自主的に帰国することでコストは大幅に減少するという。また、CBPのアプリを使用して自己退去することにより、不法移民は将来、米国に合法的に再入国できる可能性が高くなるとしている。DHSのクリスティ・ノーム長官は「自己退去が最も安全で経済的な方法」と述べた。同長官は4月21日に、不法滞在者に対して米国から立ち去るよう促し、立ち去らない場合は1日1,000ドル近い罰金を科し、投獄した後、強制送還することになると警告する動画を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた(2025年4月30日記事参照)。

DHSはまた5月5日、ノーム長官が就任してから100日間で、DHSを同省の本来の使命である国土の安全保障の使命のもとに立ち返らせたとし、同省が達成した成果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。DHSは、同長官の指揮の下で、2025年に入り、16万8,000人以上の不法滞在者を逮捕したなどと発表している。

DHS傘下の米国移民税関捜査局(ICE)は、定期的に不法滞在者の逮捕数を発表している。同局は4月15日、労働許可なく不法就労していた者を1,000人以上逮捕したと発表した(2025年4月22日記事参照)。同局はまた5月1日、フロリダ州で連邦と州の法執行機関が初めて連携し、1週間の捜査期間中に過去最多の1,120人の外国人犯罪者を逮捕したと発表した。

米国運輸保安局(TSA)、リアルIDの完全運用を開始

DHS傘下の米国運輸保安局(TSA)は5月7日、米国のTSA検問所においてリアルIDの運用を正式に開始したと発表した。リアルIDとは、「リアルID法」に基づき連邦統一基準を満たした運転免許証や身分証明書(各州が発行)のことで、それなしでは米国内旅行や特定の連邦施設へのアクセスが禁じられる(2022年12月14日記事参照)。リアルIDを持っていない場合は、パスポートなどで代用できる(注)。発表で、DHSのノーム長官は「リアルIDは旅行者の本人確認を確実にし、犯罪者、テロリスト、不法滞在者による詐欺を防止するのに役立つ」と述べた。

(注)詳細はTSAのウェブサイトで確認外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますできる。

(吉田奈津絵)

(米国)

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