欧州会計検査院、欧州半導体の世界シェア20%目標に対する乖離を指摘
(EU)
ブリュッセル発
2025年05月12日
欧州会計検査院(ECA)は4月29日、2030年までにEUの半導体分野における世界市場シェアを20%とする目標(2024年10月29日付地域・分析レポート参照)の達成見込みは低く、早急な現状分析と是正措置が必要との報告書を発表した(プレスリリース)。EUは2023年に欧州半導体法(2023年8月2日記事参照)を施行し、現状10%程度であるシェアを2030年までに倍増することを目指しているが、現状の生産施設に対する投資レベルでは、2030年のシェアは11.7%にとどまる予測だと指摘した。地政学的な競争や変化が激しく、目標達成には2030年までに生産能力を約4倍にする必要があり、欧州委員会は現実に合わせ長期戦略を見直すべき、とした。
また、同法により、EUでは2030年までに官民合わせて約860億ユーロの資金調達を見込むが、EU予算からの拠出は5%(45億ユーロ)のみで、残り95%は加盟国と産業界からの拠出を見込んでいる。世界のトップメーカーは、2020~2023年の3年間で4,050億ユーロ規模の投資予算を組んでおり、その大きな差を指摘。加えて、同法には明確な目標、達成評価が欠けており、業界の需要を適切に把握するのが困難とした。
同分野におけるEUの競争力は、原材料の輸入依存や環境保護(2023年12月15日付地域・分析レポート参照)、エネルギーコストの高騰、地政学的緊張と輸出規制、熟練労働者の不足(2024年12月18日付地域・分析レポート参照)などに影響される。さらに、EUの半導体産業は、高付加価値のプロジェクトに少数の大企業が集中するため、資金が集中し、1つのプロジェクトの中止や遅延、失敗が産業全体に大きな影響を及ぼす可能性も指摘した。
これらを踏まえECAは、欧州委が加盟国や産業界との緊密な協力の下で、2026年までに次なる半導体戦略を策定するため、準備を開始すべきだと提言した。
(大中登紀子)
(EU)
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