日系自動車メーカー6社、2025年度業績に及ぼす関税影響の見通しを公表

(米国、日本)

ニューヨーク発

2025年05月21日

日本の大手自動車メーカー6社は、2024年度(2024年4月~2025年3月)の決算発表に際し、2025年度(2025年4月~2026年3月)におけるトランプ政権の追加関税の影響に関する見通しを明らかにした。

トヨタ自動車は2025年4~5月に発生する関税コストが1,800億円に上ると試算し、通年の営業利益が前年度比で約1,000億円減少、純利益は約35%減の3兆1,000億円との見通しを発表した。一方で、佐藤恒治代表取締役社長らは関税の影響に関し、「足元の収益・事業構造上、ジタバタしなくてはならない状態にはない」として、「場当たり的な価格転嫁は行わない」という方針を明らかにした。

また、ホンダは、2025年度通年の関税コストとして4,500億円(注1)を見込んでおり、この影響により営業利益が前年度から7,134億円減少して5,000億円になると発表した。4月29日には米政府が、自動車部品に対する追加関税の緩和措置(2025年4月30日記事参照)を発表したが、実際の導入にあたっては不明確な点が多いため、今回の試算では関税率を一律25%と仮定し、影響を最大限に見積もった。個社ごとの特殊事情を除けば、ゼネラルモーターズ(GM)やフォードが発表した関税コスト(それぞれ最大50億ドル、25億ドル)に近い水準になっている(2025年5月7日記事参照)。関税への対応策として、乗用車「シビック」の5ドアハイブリッド車(HEV)とスポーツ用多目的車(SUV)「CR-V」について、それぞれ日本、カナダから米国へ生産移管を計画している。生産シフトの拡大や週末稼働の増加などを通じて、まずは米国内の増産で影響を最小限に抑える方針で、新規投資については慎重に判断する見通しだ。

日産自動車も、関税コストを最大4,500億円と試算。第1四半期には米国生産モデルの販売強化などで、影響の3割を抑えられるとしたが、コスト算定中のため、業績見通しは「未定」とした。

スバルは米国での販売台数約68万台に対し米国内生産台数は約35万台、マツダは約43万台に対し約10万台と限定的で、いずれも日本からの輸入車両の割合が大きい(注2)。スバルは、関税対策を講じない場合の影響額を25億ドル程度と試算。さまざまな対策を講じることで、営業利益1,000億円(2024年度実績は約4,000億円)の確保を目指すとした。マツダは、メキシコ製車両と米国製SUV「CX-50」に搭載される部品が関税対象となるほか、米国からカナダへの輸出車両に対する報復関税の影響を受けると公表。2025年4月単月で、90億~100億円程度の関税コストが発生したことから、販売奨励金の引き下げを始めたと明らかにした。スバルとマツダは、関税の影響に不透明さが残るとして、いずれも業績見通しの発表を見送った。また、2025年2月にサウスカロライナ州に新工場の建設を発表したいすゞは、関税の影響として通年で160億円を見込むと発表した。また、米国での売り上げ台数について、年間2万6,000台(関税がなければ3万3,000台)を見込むとしている。

(注1)関税コストは、完成車に対する3,000億円、部品輸入に対する2,200億円、二輪車に対する1,300億円の合計から、「挽回努力」による成果見込みの2,000億円を差し引いたもの。

(注2)2024年度実績。

(大原典子)

(米国、日本)

ビジネス短信 18eb10d8b5913fb5